鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.2 相続は悲しみを乗り越えて鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.2 相続は悲しみを乗り越えて

今回は「定義」を考えてみましょう。当然、相続税に関わるものです。

「定義」と大袈裟にいいましたが、そんなに難しく考えないでおきましょう。税法を知るためには、まず「堅い、難しい、面白くない」という気持ちを捨てることをお勧めします。法律ですから「堅い、難しい、面白くない」ものなのです。でも自分に一番身近な法律ですので、自分に置き換えて考えてみるとなかなか面白いものです。

「税法は税金を払うためのもの」だから「面白いはずないじゃないか」と思われますが、それは全くその通りです。僕が言いたいのは、「税法を理解するためには、自分のことに置き換えてなるべく普通の言葉で考えると、難解だったものが、わりと親しみやすくなり、わかってくれば徐々に面白くなる」ということです。

死亡

まず、人の「死亡」を考えてみましょう。

「死」とは、医学的には脳が停止したこと、とか法律的には心臓が停止したこと、などといろいろいわれています。本気で考えれば非常に難しい定義のようですね。この死亡が法律上争いとなって、相続する財産が増えた、減ったという事例も数多くあります。ここでは、常識に従って「死」というものを考えます。実務上は「医者の死亡診断書」で確認がとれます。

人が「死ぬ」ということは、当然その人の「人生が終わる」ことです。
相続税の上では、その人に属していた財産権利などが相続人に移転するということです。その仕組みの概略は前回(第1回)で説明しました。ある女性歌手が歌っていた歌にもあるように「いつまで経っても来ぬ人と、死んだ人とは同じこと」です。

では、いったいどういうことでしょうか?たとえば、親父が山に登って運悪く遭難してしまった。救助捜索活動が展開されたが、全く行方がわからない、という場合です。
「親父ッ、いったい何処にいるんだッ!?」と叫んでも当然返答はありません。
不幸にして家族の中でそういったことがあった場合、悲しんでいるだけでは仕方がないのです。法律的には、何らかの事実を生じさせないと、次が続きません。

難しく言えば、権利関係が不安定になるんです。
そこで民法は、失踪(しっそう)ということを定義しました。一般的には、最後にその人の行方が分かった時から7年間、全く行方不明で音信不通の場合「死亡」とすることができます。

相続税に関する用語解説

失踪
最後にその人の行方が分かった時から7年間全く行方不明で音信不通の場合。

失踪

「死亡」とすれば、自ずと「相続」が発生し、権利関係が整理できます。これは絶対的にその人が「死んでいる」とは限りませんが、法律的に「死んだ」人にすることです。そのため、相続税の上では「人の死亡」が相続の開始なのですが、この死亡には失踪も入ります。正確には失踪の宣告と言います。

これを受けてその人は晴れて(?)「死亡した」ことになります。こんな表現をすれば怒る向きもあるでしょうが、説明の上でのことだと割り切って許しを請うことにします。

ちなみに、失踪の宣告には今言ったような普通失踪とそれとは少し違う危難失踪があります。危難失踪とは特別失踪とも言われますが、やはり最後の行方から1年経過すると失踪の宣告ができるものです。飛行機事故で生死が不明とか、船が遭難したとかです。普通の行方不明となる場合とは違い、明らかに「死」の確立が高いものです。たとえば飛行機が落ちればスーパーマンでもあるまいし、かなりの確立で死亡してしまうでしょう。いずれにしても失踪の宣告が相続の開始となります。

相続税に関する用語解説

失踪の宣告
その人が「死んでいる」とは限りませんが、法律的に「死んだ」人にすること。
普通失踪
最後の行方から7年間全く行方不明で音信不通の場合。
危難失踪
最後の行方から1年経過すると失踪の宣告ができるもの。普通の行方不明とは違い、明らかに「死」の確立が高いもの。

法人の場合

さて、法人という言葉を良く耳にします。株式会社とか有限会社などです。現在は法律が変わったため、有限会社を新しく設立することはできません。ただし、これまでの有限会社はそのまま残っていますが、特例となって株式会社の一形態です。

これらは法人といわれ、これに対して「私達」のことを自然人といいます。同じように「じん」「ひと」という言葉が使われています。それじゃ、法人も「相続」というものがあるのか?と言う疑問を感じれば、あなたはたいしたものです。

答えはノーです。相続は自然人に限られます。法人が「死亡」ということは「倒産」とか「解散」などをさしますが、それは法律の手続きで、その法人を消滅させることです。
「破産」「会社更正」「会社整理」などと言われます。

会社の代表者(個人)が死亡することはよくあります。代表者でも当然人間です。いつかは死にます。しかし、それが会社の「死」を意味するわけではありません。その時には、代表者の変更が行われるだけです。

相続税に関する用語解説

法人
株式会社とか有限会社のこと。

遺贈

遺贈(いぞう)とは、一般には遺言のことです。遺言に基づいて財産を引き継ぐことを遺贈と言います。遺言は法律的用語では(いごん)と読みますが、一般的には(ゆいごん)でもよいでしょう。法律用語は時と場合によっては非常に重要ですが、それほどこだわる必要はありません。

遺言には何種類かの方法があります。公正証書遺言自筆証書遺言などです。
公正証書遺言とは、公証人役場に出向いて遺言を作成することです。公証人役場とは、書いて字のごとく「公に証明する書類を作成する場所」です。自筆証書遺言とは、自分で書いて遺言とすることです。

遺言があると法定相続に優先します。

相続税に関する用語解説

遺言(いごん・ゆいごん)
自分の死んだ時、所有する財産などをどのように処分するかを書き留めておくこと。遺言は法定相続に優先するのが原則。
遺贈(いぞう)
一般には遺言のこと。遺言に基づいて財産を引き継ぐこと。
自筆証書遺言
自分で書いて遺言とすること。
公正証書遺言
公証人役場に出向いて遺言を作成すること。
公証人役場
公に証明する書類を作成する場所。各市町村ごとに設置されている。

法定相続

第1回で少し触れてありますが、ここではもう少し詳しく解説します。

第一順位―直系卑属と配偶者

図1:第一順位のしくみ
※子供の配偶者は血のつながりがないので相続人にはならない
※子供と孫が死亡している場合は、曾孫が相続人となる

第一順位は、子供と配偶者です。子供のことを直系卑属(ちょっけいひぞく)といいます。直系ですから、自分を中心に血のつながりがある者を意味します。卑属とは、自分を中心に世代が下の者です。ですから直系卑属とは、「自分を中心に世代が下で血のつながりがある者」となります。つまり子供、孫、曾孫などです。そして、自分に1番近い生存者が相続人となります。たとえば、子供が死亡していたら孫が相続人になります。

第二順位―直系尊属と配偶者

図2:第二順位のしくみ

第二順位は父母と配偶者です。正確には直系尊属と配偶者になります。
尊属(そんぞく)とは「自分を中心に世代が上で血のつながりがある者」です。つまり、両親は当然のこと、両親の両親、つまりおじいちゃんおばあちゃんです。もっと上があればそれも直系尊属です。
「尊属」とか「卑属」と言う言葉は、漢字の意味からなんとなく分かるでしょう。尊ぶのが親、卑下するのが子供、ということでしょうか。こう考えるとわかりやすくなるはずです。

第三順位―兄弟姉妹と配偶者

図3:第三順位のしくみ
第三順位は兄弟と配偶者です。正確には「兄弟姉妹」と配偶者です。「兄弟姉妹」は(けいていしまい)と読みますが、(きょうだいしまい)でも一向に構わないでしょう。

祖父や祖母よりももっと上の尊属が生存していればそこまでいきますが、今は死亡しているとします。父も母も既に亡くなっていて、父方の祖父も祖母も、そして母方の祖父も祖母も亡くなっている場合に、はじめて第三順位になります。誰か直系尊属が1人でも生存していれば、兄弟姉妹に相続権は発生しません。

相続税に関する用語解説

直系卑属
自分を中心に世代が下で血のつながりがある者。子供、孫、曾孫。
直系尊属
自分を中心に世代が上で血のつながりがある者。両親、祖父・祖母。

Profile

税理士鈴木 千弘先生 Chihiro Suzuki

1952年生まれ/血液型A型
横浜市立大学商学部経営学科卒業
昭和63年1月事務所開業以来「歌って踊れる税理士」として多数のクライアントを持つ。