鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.3 相続税の計算 1 ~第一順位の相続の場合~鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.3 相続税の計算 1 ~第一順位の相続の場合~

さあ、いよいよあなたの相続税の計算です。一生に何回もあるものではありませんので、案外安いと思うはずです。でも、基になる金額が大きいので、あなたの相続税額も大きいかも知れませんが・・・。

相続する財産額は協議分割で

被相続人の財産は相続人が引き継ぎますが、それは遺言がある場合を除いて、各相続人が協議してそれぞれが相続する財産を決定します。これを、協議分割と言います。また、書面に残したものを分割協議書と言います。

第1順位とか第2順位などは相続人が誰だかを決定する法律です。相続人がどの財産をどれだけ相続するかを決定するものではありません。基本は相続人同士が話し合い、一人一人が取得する財産を決めます。ですから協議分割は「法定相続分」に先行します。「法定相続通りにしよう」という分割は、協議分割です。したがって、必ず第1順位の相続だから配偶者2分の1、子供2分の1で分割すると言うわけではありません。また、たとえ遺言があったとしても、相続人および受遺者の全員がこの遺言とは異なる内容で協議分割をすることも可能です。

相続税に関する用語解説

被相続人
死亡した人。
相続人
被相続人の財産を引き継ぐことができる人。
協議分割
財産を誰が貰うのか、ということを相続人の間で話し合い、それに基づいて分割することをいいます。
分割協議書
協議分割に基づいて分割が確定したら、それを書面にします。その書面に各相続人が署名捺印をして後日のために用意します。後日のためとは、俺は、私はそんなことに同意していない、と言うクレームに対するものです。証拠として残すと言って良いでしょう。
法定相続分
被相続人の相続人となり得る人が、法律で定められた財産相続の取り分のこと。

基礎控除額の計算方法

図1:第一順位相続の場合

さて、1番オーソドックスな場合を想定すると、第一順位の相続の場合です。被相続人に子供2人、配偶者1人(これは当然ですね。配偶者が2人以上いるのは日本ではあり得ません。他の国では認められている場合もあると聞きますが)がいる場合です。(仮にAさんとして話を進めます。)

相続税の基礎控除額は次のようになります。基礎控除ですから、相続する財産の多少にかかわらず一律です。

この場合の「法定相続人の数」とは、相続人の中に相続の放棄をした者がいる場合でも、その放棄がなかった場合の相続人の数です。

たとえば、配偶者が「私は相続しない」と言う意思を裁判所に述べれば、相続の放棄が認められます。その放棄がなかった場合は、初めの3人になります。

また極端な場合として、お父さんの財産は妻の私が全額相続し、子供達は何も相続しない、という場合もあります。子供達がまだ小さい時などは、このケースが多いでしょう。この場合でも子供達が「正規の相続の放棄」の手続きを取らない限り、相続の放棄ではありません。ゼロの財産を相続したと考えるのです。あくまでも、相続人は配偶者、子供2人の合計3人になります。言葉で「俺は財産はいらないよ」と言う殊勝な子供がいたとしたら、それは日本の未来を明るくする言葉には違いないでしょうが、相続の放棄ではありません。

相続税の基礎控除額の計算
相続税の基礎控除額= 3000万円+600万円×法定相続人の数
【Aさん親子の基礎控除額】
Aさんの基礎控除額=3000万円+600万円×3人=4800万円

相続税に関する用語解説

相続の放棄
人が死ぬと相続が発生し、その段階では相続人全員がその人の財産を引き継ぎます。相続人皆の共有ということです。しかし、「その財産をいらない」と言う人がいれば、そのことを裁判所で申し述べて、相続の放棄をします。相続の放棄は、法律手段なのです。一般によく言われるように『いらない』と言う口約束ではありません。

相続税の課税価格

被相続人の相続財産の価額から、この基礎控除額を引いた金額を相続税の課税価格と言いますが、この金額を法定相続人が法定相続分で相続したものと仮定します。『仮定』ですから、実際の取得金額とは異なります。

法定相続人は第一順位の相続ですから、配偶者と子供2人です。そしてその相続分は、第一順位の相続ですので、子供が1/2、配偶者が1/2です。そして子供は2人いますので、子供1/2をそれぞれ子供1が1/2×1/2=1/4、子供2も同じく1/4です。

金額で計算しますと次のようになります。仮にAさんの相続財産の合計が1億円だとすると課税価格は次のようになります。

相続税の課税価格の計算
相続税の課税価格= 被相続人の財産の価額−基礎控除額
【Aさん親子の課税価格】
Aさんの課税価格=1億円−4800万円=5200万円

この課税価格を法定相続分で3人に按分します。

Aさん:5200万円×1/2=2600万円
子供1:5200万円×1/4=1300万円
子供2:5200万円×1/4=1300万円

この金額をもとに相続税の速算表を使って次のように計算します。

Aさん:2600万円×15%−500,000円=3,400,000円
子供1:1300万円×15%−500,000円=1,450,000円
子供2:1300万円×15%−500,000円=1,450,000円

相続税速算表(平成27年1月1日現在)
各取得分の金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% 0円
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
相続税速算表(平成27年1月1日現在)
各取得分の金額 税率 控除額
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

相続税に関する用語解説

課税価格
これは相続税法に限った用語ではありません。税額を計算する場合の「基となるもの」です。これに税率を掛けて税額が計算されます。
相続税の速算表
計算式に当てはめると求めようとしている控除額が簡単に計算出来る表です。

相続税額の総額

ここで計算された金額を合計した金額が、相続税額の総額といわれるものです。

相続税の総額の計算
相続税額の総額= 各人の課税価格にかかる相続税額の合計額
【Aさん親子の相続税額の総額】
Aさん親子の相続税額の総額=3,400,000円+1,450,000円+1,450,000円=6,300,000円

この相続税の総額を、各相続人が実際に取得した財産の価額で按分します。

初めに、被相続人の財産の価額の合計額を1億円に設定しましたので、これを次のように取得したものとします。協議分割も可能ですので、何も法定相続分に匹敵させる必要はありませんが、今はこの金額で落ち着いたとします。

実際に取得した財産の価額
Aさん:1億円×1/2=5000万円
子供1:1億円×1/4=2500万円
子供2:1億円×1/4=2500万円

各人の相続税額は次の計算式で計算されます。これを各人の算出相続税額と言います。

各人の算出相続税額の計算
算出相続税額= 相続税の総額×(各人の取得した財産の価額÷被相続人の財産の価額)
【Aさん親子、各人の算出相続税額】
Aさんの算出相続税額=6,300,000×(5000万円÷1億円)=3,150,000円
子供1の算出相続税額=6,300,000×(2500万円÷1億円)=1,575,000円
子供2の算出相続税額=6,300,000×(2500万円÷1億円)=1,575,000円

相続税法で加算・減算が適用されるものが何もない場合にはこの金額が、それぞれが相続税として納めなくてはならない金額となります。
ところが、相続税法には次のような規定があります。

  1. 相続開始前3年間の贈与財産の加算
  2. 配偶者の相続税額の軽減(さわり程度は「Vol.2 相続は悲しみを乗り越えて」で触れています。)
  3. 未成年者控除
  4. 障害者控除
  5. 相次相続控除
  6. 外税控除

相続税に関する用語解説

相続税の総額
相続税法は、実際がどんな分割でも関係なく、いったん法定相続分で法定相続人が取得したと仮定します。それに基づいて計算された各人の税額の合計額をいいます。

Profile

税理士鈴木 千弘先生 Chihiro Suzuki

1952年生まれ/血液型A型
横浜市立大学商学部経営学科卒業
昭和63年1月事務所開業以来「歌って踊れる税理士」として多数のクライアントを持つ。