鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.6 知っておくと得する、非課税財産 1鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.6 知っておくと得する、非課税財産 1

初心に戻って『財産』をもう1度考えてみましょう。法律を知るには、まず概略を知った上で、細かく理解していく、という姿勢が1番よいと思います。この機会にもう1度読み直してください。

相続財産Vol.1で、「積極財産から消極財産を引いた金額となる」と説明しました。積極財産は、「不動産、現金預金、様々な権利など」を指し、消極財産とは、「借金、未払い金など」でした。今回は、これらの『財産』について、もう少し詳しく説明していきましょう。

『非課税財産』とは、どんな財産?

相続税については、重要な部分を『相続税の計算(1)』(Vol.3参照)、『相続税の計算(2)』(Vol.5参照)において、各人の相続税の計算方法を説明してきました。そして、その算出相続税から『3年内生前贈与財産加算』『相続税の2割加算』『配偶者の相続税額の軽減の規定』についても解説しました。

次に、『未成年者控除』を解説しなければならないところですが、なかなかそんな計算のことばかり書いていると、読者諸兄に飽きられるかもしれないので、ここで少し元に戻って、頭の切り替えを狙います。

被相続人(亡くなった人)の財産には、実はもう1つの『財産』があります。財産の区分の仕方としては意味が違うのですが、税法上の考え方として、『非課税財産』というものがあるのです。

相続税の非課税財産

  1. 皇室経済法(昭和22年法律第4号)第7条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物
  2. 墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの
  3. 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令(令第2条)で定めるものが相続又は遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの(この財産を取得した者がその財産を取得した日から2年を経過した日において、なお当該財産を当該公益を目的とする事業の用に供していない場合においては、当該財産の価額は、課税価格に算入する)
  4. 条例の規定により地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する共済制度で政令(令第2条の2)で定めるものに基づいて支給される給付金を受ける権利
  5. 相続人の取得した第3条第1項第1号に掲げる保険金(前号に掲げるものを除く。以下この号において同じ)については、イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、イ又はロに定める金額に相当する部分
    1. 第3条第1項第1号の被相続人のすべての相続人が取得した同号に掲げる保険金の合計額が500万円に当該被相続人の第15条第2項に規定する相続人の数を乗じて算出した金額(ロにおいて「保険金の非課税限度額」という)以下である場合、当該相続人の取得した保険金の金額
    2. イに規定する合計額が当該保険金の非課税限度額を超える場合、当該保険金の非課税限度額に当該合計額のうちに当該相続人の取得した保険金の合計額の占める割合を乗じて算出した金額
  6. 相続人の取得した第3条第1項第2号に掲げる給与(以下この号において「退職手当金等」という)については、イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、イ又はロに定める金額に相当する部分
    1. 第3条第1項第2号の被相続人のすべての相続人が取得した退職手当金等の合計額が500万円に当該被相続人の第15条第2項に規定する相続人の数を乗じて算出した金額(ロにおいて「退職手当金等の非課税限度額」という)以下である場合、当該相続人の取得した退職手当金等の金額
    2. イに規定する合計額が当該退職手当金等の非課税限度額を超える場合、当該退職手当金等の非課税限度額に当該合計額のうちに当該相続人の取得した退職手当金等の合計額の占める割合を乗じて算出した金額
図1:相続財産
非課税財産

これが、『相続税の非課税財産』です。これをVol.1相続財産の計算式に加えると次のようになります。

ではなぜ、『非課税財産』なるものが存在するのか、という疑問に答えるために解説していきましょう。

相続税の非課税財産
積極財産-非課税財産-消極財産 =被相続人の財産

解説

1. 「皇室経済法(昭和22年法律第4号)第7条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物」
皇室は、美濃部達吉先生の『天皇機関説』ではありませんが、日本国民にとって依然として特別の存在です。その特別の存在の皇室にあるものが、やはり相続という事態で次の者に移転しても、そこに課税するのは心情的、国民感情的に適当でないということです。
少々本題から外れますが、『天皇機関説』とは何か?皆さんは、よくご存知なのかもしれませんが、簡単に書いておきます。
『天皇機関説』とは、昭和10年(1935年)、美濃部達吉の論じた『天皇機関説』が問題となり、著書『憲法撮要』などが発売禁止となりました。「統治権は天皇に最高の源を発するが、同時に天皇は憲法に従って統治の権能を行使する最高の(機関)である」とする説です。詳しくは、インターネットで『天皇機関説』もしくは『美濃部達吉』で検索してください。僕自身が、この考え方を指示しているとかしていないとか、そういうことではありません。(念のため)
2. 「墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」
「死者を祭るこれらのものに課税するのかいかがなものか?」という発想です。
「いかがなものか?」この言い回しは一時期流行りましたが、ここでも同じ言い方ですね。ご勘弁のほどお願いします。
ここで面白いことを1つ。もう皆さんはお分かりだと思いますが、被相続人が現金を持っていたら、それを相続した人が税金を払います。相続人(財産を取得した人)が、被相続人の魂を祭るために墓所を購入したとしましょう。現金という財産に課税されてから、「お墓」を買うことになります。では、被相続人(亡くなった人)が生前に自分の墓を買っていたらどうなるでしょうか?墓は『非課税財産』ですので、課税されません。死ぬ前に買うのと死んでから買うのでは相続税が違ってきます。面白いでしょう?
このようなことが、ある種の『節税対策』と言われるものです。
3. 「宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令(令第2条)で定めるものが・・・」
この規定のように「政令で定める」というような文言がある場合は、当然詳しく知る必要がある時は、その政令を読まなくてはなりませんが、『非課税財産』とは何ぞや?という程度の時は、次のように読むとよいでしょう。
『宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で一定のもの』―これが非課税とされる理由は、『公益性』ということです。ある特定の者だけに効果があるものではなく、世間一般にとって非常に有意義な行為という観点から、『非課税』とされています。常識的に「これは当然」と思うでしょう。それでいいのです。前にも言いましたが、税法は酷なものというイメージが強いですが、ある程度は常識が入っているんです。これを称して「税法もまんざらではない」と僕は言っています。
さて後半のカッコ書きですが、2年間がどうして決められたのかは不明ですが、このくらいの時間をかけても『公益』に費やされなければ、「やっぱリ課税しますよ」ということです。『公益』という名を借りた、『脱税』の防止ですね。
4. 条例の規定により地方公共団体が精神又は身体に障害のある者に関して実施する共済制度で政令(令第2条の2)で定めるものに基づいて支給される給付金を受ける権利
これは『条例の規定により地方公共団体が精神または身体に障害のある者に関して実施する共済制度で一定のもの』と読みましょう。そして『精神または身体に障害がある者』は、普通の人?と比べてハンディがあるので、そのハンディを考えて『非課税』とされています。
最近やたらと精神に異常をきたしている人の犯罪がメディアを騒がせていますが、その段階での『精神または身体に障害がある者』ではありません。行政でその認定を受けた人たちです。「普通の人」と言う表現は微妙ですね。

相続税に関する用語解説

相続財産
相続の対象となる財産。例えば税理士という資格はその人だけに備わるもの(一身専属権という)なので相続できない。
積極財産
プラスの財産。「借金も財産のうち」と言われるが、それはマイナス財産、消極財産という。
被相続人
死亡した人。
非課税財産
相続税の課税価格に算入しない財産。相続財産の中でも、墓、生命保険金のうち一定額、退職金のうち一定額などは課税されない。
相続人
被相続人の財産を引き継ぐことができる人。

Profile

税理士鈴木 千弘先生 Chihiro Suzuki

1952年生まれ/血液型A型
横浜市立大学商学部経営学科卒業
昭和63年1月事務所開業以来「歌って踊れる税理士」として多数のクライアントを持つ。