鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.8 まだ一人前ではないですよ、未成年者の諸君鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.8 まだ一人前ではないですよ、未成年者の諸君

相続税額を計算する場合の特殊事情にある人に対する税額控除を説明します。「特殊事情」とは、一般の人に対して特殊ということです。成年に対しての「未成年」、健常者に対しての「障害者」などです。今回はその「未成年者控除」について解説しましょう。

以前、相続税額を計算する時は、「相続税額の総額」をまず計算し、実際の財産の取得者に対し、その取得の割合に応じて、この「相続税の総額」を按分して各人の算出相続税額を計算すると説明しました。そしてその具体的財産の取得者の都合により、いろいろな規定が適用されるとも説明しました。

それが次の規定です。このうち1番から2番まではすでに解説してありますので、今回は3.「未成年者控除」を説明しましょう。

  1. 相続開始前3年間の贈与財産の加算(Vol.4)(Vol.5)
  2. 配偶者の相続税額の軽減 (Vol.5)
  3. 未成年者控除
  4. 障害者控除
  5. 相次相続控除
  6. 外税控除

「未成年者控除」について

未成年者に対して特別の手当てを施してあります。ご存知のように「未成年」はまだ成年に達していない、「未熟者」といってはかわいそうですが、世間で生きていくためには成年者よりも少しだけ負担がかかるはず、ということがこの控除の根拠になっています。今問題になっている「少年法」の考え方とは違うと言っていいでしょう。精神的なものではなく、もっと現実的につまり、「お金がかかる」と考えているのです。「何言ってんだいッ」とお叱りになる方も多くいると思いますが、「成年だって犯罪を犯す、成年だからこそ金がかかる」と言われると一言もありません。しかし「成年」に対しての「未成年」です。まだ自分で全てのことを判断し行動できるというわけではなくて、制限されているのがこの日本の実情です。

未成年者とは?

この規定において未成年者とは、「20歳未満の者」のことです。民法753条により、未成年者が婚姻をした時は、その未成年者は成年に達したものとみなされますが、これは民法上のことです。相続税法ではあくまでも20歳を基準とします。「私は19歳だけど、結婚しているから成人よ」と言って、未成年ではないと主張するのはかまいませんが、飲酒喫煙はできません。そして選挙も行けません。

20歳未満の者は相続税法上では未成年者のままなのです。ちなみに「未満」とはその数字は入りません。19歳11ヶ月と364日までです。

ただ、現在は成年を18歳に引き下げようという議論もあるようです。法律が変われば、定義も変わります。世間の動向にも注意しましょう。

控除額はいくら?

20歳になるまでの1年につき「10万円」を控除してもらえます。先ほどの例で言いますと、結婚しているその本人が19歳と1ヶ月だとしますと、20-19歳と1ヶ月=11ヶ月となります。この年数に1年未満の端数がある時は、それを1年とします。ですから、この場合の答えは1です。10万円×1=10万円が控除額です。

いつの時点で未成年なのか?

それは相続開始があった時点です。

未成年者控除が適用される人は?

この規定の適用ができる人たちは次の人たちです。

  1. 相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与、いわゆる死因贈与を含みます)により財産を取得した個人でその財産を取得した時において、この法律の施行地に住所を有するもの
  2. 相続又は遺贈により財産を取得した日本国籍を有する個人でその財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもの(その個人又はその相続若しくは遺贈に係る被相続人(遺贈をした者を含みます)がその相続又は遺贈に係る相続の開始前5年以内のいずれかの時においてこの法律の施行地に住所を有していたことがある場合に限ります)
  3. 相続又は遺贈により財産を取得した日本国籍を有しない個人でその財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有しないもので、被相続人が日本国内に住所を有しているもの

相続税に関する用語解説

死因贈与
「死因」は「死亡を原因」としてということ。つまり「死亡を原因とした贈与」のこと。「私が死んだらあなたにこれをあげます」ということで、「生きているうちはあげません」という意味。「死ぬ」という条件で『贈与』が発生する。相続税法では遺言の中に、この「死因贈与」を含めている。

解説

「法定相続人」とは、「その相続を放棄した者がいても、その放棄はなかったものとした場合の相続人」のことです。そして、「この法律の施行地」とは簡単には日本国内ということですが、具体的には、本州、北海道、四国、九州及びその附属の島(政令で定める地域を除く)のことです。政令で定める地域を除くとありますが、当分の間、国後、歯舞、色丹、択捉の北方四島が「この法律の施行地」から除かれることを規定しています。

未成年者控除の規定が適用される者の算出相続税額が、この規定で計算される金額以下の場合は?

未成年者の相続開始時の年齢が10歳ちょうどの場合

相続人が未成年者で、未成年者控除を使う前のその未成年者の相続税額がたとえば40万円だとします。

未成年者控除額=(20-10=10)×10万=100万円

と、計算されますが、この金額は40万円を超えています。ですから、40万円-100万円=-60万円となり、60万円を国から戻してもらえる、と考えたくなりますが、これは誤りです。還付は前もって国に払った税金を返してもらえるものです。払ってもいないものを返してもらえるはずはありません。ですからこの未成年者の相続税額は、ゼロということになりますが、引き切れなかった60万円はどうなるのでしょうか?諦めてもらうのでしょうか?

控除不足の未成年者控除額の取り扱い

この場合は、同じ相続で財産を取得した相続人で、その未成年者の扶養義務者の算出相続税額から控除することができます。そのものが2人以上いる場合は、みんなで話し合って誰の分から控除するかを決めることができますが、みんなの税額の割合によって控除することもできます。たとえば、未成年者控除不足額が60万円ある場合、その未成年者の扶養義務者としてAとBがいるとします。Aの算出相続税額が70万円、Bの算出相続税額が30万円だとしますと、Aから60万円を全額控除しましょう、という話し合いがつけば、Aは70万円-60万円=10万円の相続税額となります。またAから50万円、Bから10万円を控除しましょう、という話し合いが整えば、Aは70万円-50万円=20万円、Bは30万円-10万円=20万円の相続税額となります。もし話し合いが決裂したような場合は、それぞれの税額の比率によって控除することになります。この比率はAが70%、Bが30%ですから、Aから60万円×70%=42万円、Bから60万円×30%=18万円が控除されることになります。

その他の規定

2度にわたって未成年者控除を適用する場合が考えられますが、その場合の取り扱いもあります。今の段階では、まだこれは少々早いと思いますので今回は割愛します。

Profile

税理士鈴木 千弘先生 Chihiro Suzuki

1952年生まれ/血液型A型
横浜市立大学商学部経営学科卒業
昭和63年1月事務所開業以来「歌って踊れる税理士」として多数のクライアントを持つ。