鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.12 気になる「財産評価」1 -居住用土地の例-鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.12 気になる「財産評価」1 -居住用土地の例-

今回は相続税を計算する場合の財産の価額について解説します。相続税の計算式を頭に浮かべてください。すべての始まりは、被相続人財産の価額の大きさです。

財産の評価

借金や葬式費用などの債務控除をする前の財産とは、いわゆる積極財産みなし相続財産ですが、多分このページの読者諸氏の関心が一番高いものは、居住用財産でしょう。日本人は中流意識が8割を占めるといわれていますので、俺は、私は、自宅がありその他に少々の財産がある、という状況が大多数を占めるのではないでしょうか。ただ、リーマンショックなどの影響で少々変更されているかもしれません。

そうすれば相続税がかかってしまうという状態を念頭に浮かべるとすると、自宅は多分5,000万円くらいかな?とか、3,000万円だ、とか、いや1億は下らない、といったことを考えているのではないでしょうか。

その場合の3,000万円だとか5,000万円だとか1億円だとかいう金額は、どう考えてのことでしょう。

相続税では、財産の評価は、相続、または遺贈により取得した財産の、その取得のときにおける時価で評価するのが原則です。そしてその評価方法はその財産の種類で異なっています。

地上権および永小作権の評価定期金に関する権利の評価立木の評価などが相続税法に規定されていますが、現実には『財産評価基本通達』という通達がありますので、それに従うことになるでしょう。その『財産評価基本通達』には細かく財産の種類ごとに定められています。

そのうち、関心が高いと思われるのは自宅用に供している土地の評価でしょう。一般に土地の評価は、路線価評価方法という方法で評価されます。この路線価評価とは、国税庁が毎年発表している1m2当たりの道路に接した土地の金額のことです。たとえば、1m2当たり10万円という路線価が付された土地の場合、その土地が50坪あるとすると、一坪3.3m2ですので、坪当たり33万円ということになり、

100,000×3.3×50=16,500,000円 になります。

ただし、この評価対象の土地の形、使い勝手などでその評価額を修正する処理をする場合があります。

相続税に関する用語解説

債務控除
債務とは借金や未払い金、預かり金などの消極財産のこと。その消極財産を相続によって取得した財産から控除することを『債務控除』という。この債務控除は無制限に使えるわけではなく、相続税の無制限納税義務者と制限納税義務者でその範囲が異なる。また、本来債務ではない葬式費用が控除される。
積極財産
プラスの財産。「借金も財産のうち」と言われるが、それはマイナス財産、消極財産という。
みなし相続財産
相続が開始したとき、その『本来の相続財産』と同じ効果をもたらすもの。取得したものとみなされる財産という意味で、「生命保険金」や「退職金」などがある。
相続
人の死亡を原因とするその人の財産の移転。
遺贈(いぞう)
一般には遺言のこと。遺言に基づいて財産を引き継ぐこと。
地上権および永小作権の評価
地上権とは、「土地の上に設定する権利」のことで、目に見えるものではなく、この土地を使うことができるようにするための権利。他人の土地の上に自分の土地を建てるような場合である。また、何も建てずにその土地を自由に使うこともできる。
定期金に関する権利の評価
定期金とは、一定のことが起きた場合に一定の金額を一定の時期に貰えるもの。将来にもらえることが確定しているだけで、実際には現金を貰っているものではない。つまり「貰える権利」である。その権利を今評価するのだから、約束ごとがなくてはできない。
立木の評価
立木とは、山に生えている木のことで、山に限らず、一般に「木」のことを指す。中には『銘木』と言われる素晴らしい「木」もあり、その評価をしなくては相続税や贈与税は課せられない。
路線価
全国の道路に国税庁が価格をつけている。一平方メートルの金額。

居住用土地の評価

相続によりその居住用土地を取得した場合、330m2までの部分の評価は、「本来の評価価額の20%で良い」という規定があります。330m2という広さは約100坪です。そのくらいの自宅用に使われている土地の評価は下げようというわけです。これを『小規模宅地の特例』といっています。

小規模宅地等の特例の特定居住用宅地等の場合、被相続人が土地を所有し、その上に居住していることが前提となります。

小規模宅地等の特例が受けられる場合

  1. 被相続人と同居している配偶者がその土地を取得した場合
  2. 被相続人と同居している親族がその土地を取得した場合で、相続税の申告期限までその土地を保有し、且つ、居住している場合
  3. 被相続人と同居していない親族が、その土地を取得した場合で、被相続人に配偶者や同居していた親族がいない、且つ、相続開始前3年以内に自己または自己の配偶者が所有する家屋に居住していない、且つ、その土地を相続税の申告期限まで保有している場合

つまり、被相続人と同居している配偶者(1)、同居している子供が継続的に居住する場合(2)は基本的には特定居住用宅地等の特例を受けることができます。同居していない子供でも、被相続人に配偶者や同居している親族がいない場合で、その子供が賃貸住宅に住んでいる場合(3)にはこの特例を受けることができます。

また、二世帯住宅については、平成26年1月1日からは同居とみなされる範囲が広くなり、建物内部で行き来ができない場合などでも同居とみなされるようになります。

この改正により、二世帯住宅が区分登記(例えば1階が親名義で登記、2階が子名義で登記など)されているかどうかが、この規定の適用の可否を決めるポイントになり、区分登記されていなければ、その土地はこの規定の適用を受けることができます。

一方で、次のような場合には、この規定の適用を受けることができません。

小規模宅地等の特例が受けられない場合

  1. 被相続人と同居していない親族が、その土地を取得した場合で、自己または自己の配偶者が所有する家屋に住んでいる場合
  2. 二世帯住宅で、区分登記をしている場合の、相続人が保有する部分に対応する土地について

つまり、同居していない子供が、親が住んでいた土地を取得する場合で、すでにその子供が自分で家を買っていた場合など(1)は、この規定の適用を受けることができません。核家族化が進んだ現在、このパターンにあてはまる人も多いのではないでしょうか。

また、先ほどとは反対に、二世帯住宅が区分登記されている場合には、子が所有する部分に対応する土地にはこの規定の適用を受けることができません。

相続税法全体を通して、ここで説明したような『特例』はかなりあります。本来ならば100で評価して、その価額で相続税額を計算しなければならないのですが、居住用ということで、生活の基盤の財産まで満額課税するとなるとその税負担が過大になるだろう、というような今回説明した居住用土地評価減の特例のようなものです。生活の基盤ですから、面積制限がついています。これをつけないと、1,000坪の自宅をお持ちの方と、100坪の自宅をお持ちの方で、特例の適用に差が生じてしまうからです。

これからしばらく『財産評価』について解説していきたいと思いますが、まず皆さんが気になる財産の代表例として『居住用土地』を例にとりました。次からは具体的に例題を示して解説したいと思います。

また、後に詳細を説明する場合があるかと思います。

Profile

税理士鈴木 千弘先生 Chihiro Suzuki

1952年生まれ/血液型A型
横浜市立大学商学部経営学科卒業
昭和63年1月事務所開業以来「歌って踊れる税理士」として多数のクライアントを持つ。