鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.15 もしも不幸が重なってしまったら -相次相続控除の規定-鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.15 もしも不幸が重なってしまったら -相次相続控除の規定-

相続が度重なった場合でも相続税法ではその調整をしています。つまり、短期間で同じ財産が二度相続で、持ち主が移転したときは、その度に係る相続税を減額するシステムになっています。ここでも税法の「思いやり」というか、それらしいものが感じられますね。

相次相続とは?

今回は、相続税の税額を算定する場合の『相次相続控除』の規定について解説します。

計算の順番は

  1. 『各相続人等の相続税額』
  2. 『相続開始前3年以内に贈与があった場合の加算』
  3. 『配偶者に対する相続税額の軽減』
  4. 『未成年者控除』
  5. 『障害者控除』
  6. 『相次相続控除』
  7. 『在外財産に対する相続税額の控除』ですので、

最後から2番目の規定となります。

『相次』は「そうじ」と読みます。意味は「相次ぎ」ということです。では何が「相次ぎ」なのでしょうか。それは「相続の開始が」ということです。つまり「相続の開始が相次いだ場合」です。

相続税に関する用語解説

相次相続控除
10年以内に1人の人が所有していた財産について、2度以上相続により移転があった時には、前の相続による移転について課税させた相続税額のうち、一定額を今回の相続税額から控除する制度。

短期間の財産移転の例

さて、相続の開始が誰の目から見て「相次いだ」場合ということでしょうか。今第1順位の相続を考えてみましょう。第1順位は、両親とその子供という親族関係です。子供が1人の場合を想定します。

相次相続控除の関連図

図を見てください。まず父親が被相続人となった場合の相続人について、その相続の相続人は「母」と「子」です。父親の財産の流れを頭に描いてください。その相続で「法定相続分」で財産が承継されたとしますと、父の相続財産の全体が100だとすれば、相続分は母と子がそれぞれ2分の1ずつですので、「母」が50、「子」が50引き継ぎます。

このとき「母」が単独で形成した財産は30だったとしますと、父の相続後に「母」の財産は自分の財産30と父から承継した財産50の合計の80ということになります。

そして今度は「母」が被相続人になった場合を考えます。既に「父」は死亡しているのですから、「母」の相続に対しての相続人は「子」のみです。そして「子」が母の相続財産80を全て承継します。では「父」と「母」の相続に対してそれぞれ相続税が次のようにかかった場合を見てみましょう。「父」の相続に対して相続税が「母が1」「子が1」係ったとすれば、「父」の相続後の母の財産は自分の財産30と父からの承継分「50-1=49」との合計、つまり79です。そして「母」の相続ではこの79の財産が「子」にわたりますので、これに税金が2係ったとすれば79-2=77の財産を、「子」が貰うことになります。さて、ここで賢明な諸君はすぐに気づくでしょう。はじめの相続、つまり「父」の相続の財産100のうち、「母」が承継した50については、「母」の相続で再び相続税が課税されているのです。「父」の相続で「子」が貰った50についての相続税は1回係っています。「母」の相続で「子」が貰った財産のうち「母が父から承継した49」には既に1回相続税が係っているにもかかわらず、今度も相続税が係ります。つまり2度相続税を課税されているのです。

この関係を極端に考えた場合、今日「父」の相続があり、明日「母」の相続が開始したら、まるで二重課税の状態と考えられませんか?ある財産の移転が短期間に行われた場合、この二重課税の影響をなくすために、この「相次相続控除」の制度があるのです。そして法律ではこの短期間を「10年」と考えています。

両親が揃って死亡する場合はそれほど多くはないでしょう。しかし10年という期間を考えれば必ずしも無くはないものです。二重課税になりそうなものは排除している、ということを理解していただければよいと思います。

相次相続控除の税法の規定

若干簡素化して書いてあります。

相次相続控除の規定は相続税法第20条に規定されています。

(相次相続控除)第20条

相続(被相続人からの相続人に対する遺贈を含む)により財産を取得した場合において、当該相続(「第2次相続」という)に係る被相続人が第2次相続の開始前10年以内に開始した相続(「第1次相続」という)により財産を取得したことがあるときは、当該被相続人から相続により財産を取得した者については、第15条から前条までの規定により算出した金額から、当該被相続人が第1次相続により取得した財産につき課せられた相続税額に相当する金額に次の各号に掲げる割合を順次乗じて算出した金額を控除した金額をもって、その納付すべき相続税額とする。

  1. 第2次相続に係る被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者がこれらの事由により取得した財産の価額(相続税の課税価格に算入される部分に限る)の合計額の当該被相続人が第1次相続により取得した財産の価額(相続税の課税価格計算の基礎に算入された部分に限る)から当該財産に係る相続税額を控除した金額に対する割合(当該割合が100分の100を超える場合には、100分の100の割合)
  2. 第2次相続に係る被相続人から相続により取得した財産の価額(相続税の課税価格に算入される部分に限る)の第2次相続に係る被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者がこれらの事由により取得した財産の価額(相続税の課税価格に算入される部分に限る)の合計額に対する割合
  3. 第1次相続開始の時から第2次相続開始の時までの期間に相当する年数を10年から控除した年数の10年に対する割合

相続税に関する用語解説

遺贈(いぞう)
一般には遺言のこと。遺言に基づいて財産を引き継ぐこと。

相次相続控除の計算

これを算式で書きますと次のようになります。

この規定の適用前の算出相続税額×[(A÷B)×(C÷A)×{(10-D)÷10}] =算出相続額
  • A:第2次相続に係る被相続人から相続又は遺贈により財産を取得したすべての者がこれらの事由により取得した財産の価額(相続税の課税価格に算入される部分に限る)の合計額
  • B:当該被相続人が第1次相続により取得した財産の価額(相続税の課税価格計算の基礎に算入された部分に限る)から当該財産に係る相続税額を控除した金額
  • C:第2次相続に係る被相続人から相続により取得した財産の価額(相続税の課税価格に算入される部分に限る)
    (A÷B)が100分の100を超えるときは100分の100とする。
  • (10-D):第1次相続開始の時から第2次相続開始の時までの期間に相当する年数(これが1年未満の端数がある場合は小数点以下を切り上げ、この年数が1年未満の端数の場合は1とする)

Profile

税理士鈴木 千弘先生 Chihiro Suzuki

1952年生まれ/血液型A型
横浜市立大学商学部経営学科卒業
昭和63年1月事務所開業以来「歌って踊れる税理士」として多数のクライアントを持つ。