鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.16 夫婦間の贈与は慎重に! -贈与税の配偶者控除の規定-鈴木千弘税理士の法律講座 Vol.16 夫婦間の贈与は慎重に! -贈与税の配偶者控除の規定-

今回は『贈与税の配偶者控除』というものを説明してみようと思います。これは夫婦間の贈与です。「夫婦」とは、民法に規定する婚姻の届出をした者たちのことです。いわゆる「内縁関係」は対象外です。正式に婚姻するとしないとではこんなところでも差があります。どんな事情があるのかは分りませんが、内縁関係のままですとお互い損することになるかと思います。余計なことだったかもしれませんが。

配偶者控除とは?

夫婦を20年間以上※1続けているものたちの間で、つまり夫から妻へ、または妻から夫への「ある物」の贈与に対しては「2,000万円※2」までは課税されないことになっています。そしてこの制度は一生に一度しか使えないと考えた方がいいです。「いや待てよッ。もし20歳で結婚して20年間結婚し続けて離婚をして、そしてまた結婚したらどうなんだ? 離婚の歳が40歳だから十分に再婚してまた20年間結婚生活を続けられるぞ。その時は60歳だからまだ十分に生活力はある。」「私なんかもう一度60歳で離婚をして再婚すれば今度は80歳になるけど、まだ元気」とか何とかいう方もおいでになるかなと思いますが、一般に離婚はしない、結婚生活を続けていく、という方にとって、「一生に一度」ということです。

贈与税の配偶者控除

  1. 第21条の6 その年において贈与によりその者との婚姻期間が20年以上である配偶者から専ら居住の用に供する土地若しくは土地の上に存する権利若しくは家屋でこの法律の施行地にあるもの(以下この条において「居住用不動産」という)又は金銭を取得した者(その年の前年以前のいずれかの年において贈与により当該配偶者から取得した財産に係る贈与税につきこの条の規定の適用を受けた者を除く)が、当該取得の日の属する年の翌年3月15日までに当該居住用不動産をその者の居住の用に供し、かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みである場合又は同日までに当該金銭をもつて居住用不動産を取得して、これをその者の居住の用に供し、かつ、その後引き続き居住の用に供する見込みである場合においては、その年分の贈与税については、課税価格から2,000万円(当該贈与により取得した居住用不動産の価額に相当する金額と当該贈与により取得した金銭のうち居住用不動産の取得に充てられた部分の金額との合計額が2,000万円に満たない場合には、当該合計額)を控除する。
  2. 前項の場合において、贈与をした者が同項に規定する婚姻期間が20年以上である配偶者に該当するかどうかの判定は、同項の財産の贈与の時の現況によるものとし、当該期間の計算に関し必要な事項は、政令で定める。
  3. 第1項の規定は、第28条第1項に規定する申告書(当該申告書に係る期限後申告書を含む)に、第1項の規定により控除を受ける金額その他その控除に関する事項及びその控除を受けようとする年の前年以前の各年分の贈与税につき同項の規定の適用を受けていない旨の記載があり、かつ、同項の婚姻期間が20年以上である旨を証する書類その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
  4. 税務署長は、前項の申告書の提出がなかつた場合又は同項の記載若しくは添付がない申告書の提出があつた場合においても、その提出がなかつたこと又はその記載若しくは添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類及び同項の財務省令で定める書類の提出があつた場合に限り、第1項の規定を適用することができる。

※1:夫婦である期間が20年以上でなくてはなりません。これがもし、19年と11ヶ月とたとえば10日という場合は、だめです。「以上」ですから、20年は入ります。婚姻されたときから日数を計算して20年以上にならなければならないのです。

※2:この規定の「2,000万円」までというのは、土地建物を贈与した場合にはその土地建物の『時価』です。時価とは、買ったときの値段ではありません。今売れば、いったいいくらになるのか、という価額です。

相続税に関する用語解説

贈与
生きている人が生きている人に物をあげる、そしてそのもらう人が「もらいます」という意思表示をすることによる財産の移転。

控除の対象となる財産

これには二つあります。ひとつは『居住用財産』、もう一つは『居住用財産を取得するための現金』です。

この制度の対象となる「贈与する物」とは、いわゆる『居住用財産』です。『居住用財産』とは、生活する上でその生活の本拠となる物件、つまり住宅ですね。住まいです。住まいの「夫婦間の贈与」に対して2,000万円までを非課税としているのです。

AさんとBさんが結婚していて20年経ちました。夫名義で自宅を購入したのが結婚してから3年目でした。結婚してから20年が経ったのですが、自宅を購入してからは17年しか経っていません。この場合、自宅の購入から20年以上ではなく、夫婦になったときから20年ですので、この『贈与税の配偶者控除』は使えるということになります。Aさんが夫でBさんが妻という場合、AからBへの自宅の贈与です。『自宅』つまり『居住用財産』は建物と土地があります。マンションでもその敷地は『土地』です。今は『敷地権』といいますが、マンションの底地ですね。生活する場所が『自宅』つまり『居住用建物』ですので、土地だけではだめです。生活が土地だけでは出来ませんので。しかし一定の場合には、土地だけの取得でも大丈夫な場合があります。

相続税に関する用語解説

居住用財産
「居住用」つまり「住むため」の財産のこと。財産とはいろいろあるが、この場合は「土地及び土地の上に存する権利と建物」を指す。したがって居住用財産とは「住むための土地及び土地の上に存する権利と建物」のこと。「土地の上に存する権利」とは、地上権、借地権、敷地権などで、その土地を利用するための権利のこと。
敷地権
マンションのような区分所有建物における敷地に関する権利のこと。つまり、一戸建ての住居でいうならその土地の権利のこと。

居住用財産とは?

贈与税の配偶者控除の適用を受けられる者(「受贈配偶者」という)が取得した次に掲げる土地若しくは土地の上に存する権利(以下「土地等」という)又は家屋は、居住用不動産に該当するものとして取り扱うものとします。

1.受贈配偶者が取得した土地等又は家屋で、例えば、その取得の日の属する年の翌年3月15日現在において、店舗兼住宅及び当該店舗兼住宅の敷地の用に供されている土地等のように、その専ら居住の用に供している部分と居住の用以外の用に供されている部分がある場合における当該居住の用に供している部分の土地等及び家屋

なお、この場合において、その居住の用に供している部分の面積が、その土地等又は家屋の面積のそれぞれのおおむね10分の9以上であるときは、その土地等又は家屋の全部を居住用不動産に該当するものとして差し支えない。

2.受贈配偶者がその者の専ら居住の用に供する家屋の存する土地等のみを取得した場合で、当該家屋の所有者が当該受贈配偶者の配偶者又は当該受贈配偶者と同居するその者の親族であるときにおける当該土地等

なお、この場合における土地等には、受贈配偶者の配偶者又は当該受贈配偶者と同居するその者の親族の有する借地権の設定されている土地(いわゆる底地)を含むものであるから留意する3.において同じ)。

3.受贈配偶者が店舗兼住宅の用に供する家屋の存する土地等のみを取得した場合で、当該受贈配偶者が当該家屋のうち住宅の部分に居住し、かつ、当該家屋の所有者が当該受贈配偶者の配偶者又は当該受贈配偶者と同居するその者の親族であるときにおける当該居住の用に供している部分の土地等

というような特殊な場合ですね。

居住用財産を取得するための現金とは?

『居住用財産を取得するための現金』とは、もちろんお金そのものですが、そのお金の使い道が『居住用財産』の取得のためでなくてはならないのです。

Profile

税理士鈴木 千弘先生 Chihiro Suzuki

1952年生まれ/血液型A型
横浜市立大学商学部経営学科卒業
昭和63年1月事務所開業以来「歌って踊れる税理士」として多数のクライアントを持つ。