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吉本先生(以下敬称略) : がんは、体内の一個の細胞が、遺伝子の異常によって、無秩序(自律的)かつ無限の増殖能を獲得した新しい生き物です。正常な細胞はもともと強い増殖能をもっているのですが、その増殖は他からコントロールされており、勝手気ままに増殖することはありません。 |

吉本 : がんは、1981年から日本人の死因の第1位を占めています。がん死亡は、現在年間約30万人で、この数字は第2位の心疾患15万人、第3位の脳血管障害14万人を合わせた数よりも多いのです。 |


吉本 : がんは年齢とともにリスクが高くなります。肺がんや胃がんなど高齢者に多い病気です。最近増加している前立腺がんや肝臓がんなどもそうです。しかし、40歳を超えるといろいろながんがみられるようになりますから注意が必要です。子宮がんや乳がんなどはもっと若い年齢からみられます。 |

吉本 : 増えているがんは、肺がん、前立腺がん、大腸がん、乳がんなど。乳がんでいうと、わずか20年間(1975~1995)で約2倍になりました。卵巣がんは欧米では減少していますが、日本では増加しています。欧米ではピルの服用によって卵巣がんが減少したといわれています。 |

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吉本 : 乳がんと子宮頸がんなどはよく治っています。難しいのは、膵臓がん、肺がん、食道がんなどです。がんがどれくらい治っているかというと、正確なデータはありませんが、おおよそ半分くらいでしょうか。 |



吉本 : 日本では毎年約3万5千人が新たに乳がんに罹っていて、現在治療中の患者は9万人を超えるといわれています。乳がんの罹患率(年齢補正による)は、日本人女性の部位別がん罹患の第1位になりました。死亡率は全体でみると女性の6位です。しかし注目すべきことは、20~60歳の年齢枠でみると、女性の臓器別がん死亡率の第1位が乳がんだということです。とくに40~50歳代の女性では、乳がんで亡くなられる方の割合が高いのです。家庭においても社会においても重要な役割をもつ年代ですから、女性にとって最も恐ろしいがんだといえます。 |



吉本 : 原因のひとつは食生活の変化です。欧米にならって動物性脂肪の摂取量が増え、豊かな食生活になると乳がんに罹りやすくなります。乳がんにとっては、今の食生活よりも戦前の質素な食生活のほうがいいのです。ただ、現在日本人女性の平均寿命は世界一ですから、豊かな食生活が全体的な健康にいいことは間違いありませんが、乳がんや大腸がんにはよくありません。 |

吉本 : 本当にそうです。もうひとつの原因は女性のライフスタイルの変化です。乳がんは月経歴と出産歴が大きく関係します。なかでも、初産年齢は最大のリスク要因です。早く子どもを産むと乳がんになりにくく、遅いほど乳がんになりやすいのです。出産前の乳腺細胞は発がん刺激に敏感で遺伝子に傷がつきやすく、出産すると乳腺細胞は発がん刺激に敏感でなくなるからです。 |

吉本 : 他の臓器がんと違って乳がんは、自分で乳房を触ってしこりを発見することが可能です。自己検診を行い、乳房の変化をいち早く発見することがポイントです。しかし、しこりを作らない乳がんも少なくありませんから、自己検診でわかるのは乳がんの一部です。自分で異常を見つけたときには、それが悪いものなのか良いものなのか自己診断しないで、必ず専門医に診ていただきましょう。早期発見・早期治療でずいぶんと治癒率が高くなります。 |

吉本 : 乳がんの治療成績はめざましく改善してきています。もうひとつ、乳がん治療で進歩といえるのは、小さな手術で治るようになってきたことです(縮小手術)。具体的には現在、日本全国で約半数の乳がん患者さんが乳房温存療法を受けています。比較的早期の乳がんでは、治癒率を犠牲にしないで乳房温存治療が可能になっているのです。世界的には1980年頃からですが、日本で導入されたのは1986年です。 郭清(※)…がんを切除する際、周辺のリンパ節を切除すること。がんはリンパ節に転移しやすいことからがんの根治・予防のために行われる。 |



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