吉本先生(以下敬称略) : がんにならないための一般的な注意事項は、『がんを防ぐための12か条』(国立がんセンター)にまとめられています。 |
吉本 : がんになったときの心構えは、『がん患者心得十か条』を参考にしてください。このような心構えをもつというのが非常に大切だと思います。 |
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吉本 : がんになったら、困ることがあります。がんの治療にはものすごくお金がかかるということです。たとえば、乳がんで再発した場合では、毎月高額医療費(※)の限度額(普通所得者で72,300円、低所得者で24,600円)よりずっとかかります。治療を始めると、医療費が毎月7万円以上も必要になる人が少なくないのです。また医療費以外に、いろいろと経費がかかります。乳がんの場合では、若い40代、50代の方が多いですから、毎月7万円超の出費はたいへんなことです。普通はそんな余裕はないわけですから、がんになる前に「がん保険」に入っておかなければなりません。がんになってしまったら入りたくても入れませんからね(笑)。 (※)高額医療費を支払った場合、72,300円以上については3ヶ月以後に還付されます。実質的な医療負担額は月額72,300円ですが、それを超えるものについても還付されるまでは一時的に自己負担しなければなりません。負担が大変な人には役所で「高額療養費貸し付け制度」があって、無利子で借りることができます。
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吉本 : これだけがんが増えると、自分がいつがんになるかわかりません。不幸にもがんになったとき、その事実を受け入れなければなりません。受け入れたときに治療が始まります。 |
吉本 : いざ自分ががんになったときに、どこに行ったらいいのかわからないで困っている人が多いんです。アタフタしないためにも、日頃からテレビとかお友だちどうしの話しとか、がんの人のお見舞いなどに行ったときなど、自分もがんになりうるという前提で、常に情報を収集することが大切だと思います。そうでないと、いざなったときにどうしていいかわからない、とパニックになりかねません。 |
吉本 : 皆さんは告知する側の立場を考えたことがありますか。患者側の立場では、患者さんの性格などをよく考慮して、だいじょうぶそうな人には告知し、だいじょうぶでない人には告知しないでほしいという気持ちがあると思うんです。ところが、がんを告知する側の立場としては、たくさんの患者さんの中で、この人には告知した、あるいは告知しないでいる、ということを1人ひとりについて覚えていて巧みに治療するという芸当はできません。がんを告知しないで治療するということは、それ以降のすべての治療についてウソをつくことです。それでは治療はうまくいくはずはありません。 |
吉本 : それは乗り越えていただかなければなりません。昔はがんの告知をすると自殺する人が出るんじゃないかと危惧しました。医者の愚かな親切心で、告知をしなかったわけです。でも実際はそうではなかった。がんの告知を受けて自殺する人が増えているかというと増えていません。 |
吉本 : たとえば(余命が)1年しかもつかもたないかなんて、それは神のみぞ知るということでしょう。実際わかりません。「どうなんですか?」と聞かれても、「ちょっと厳しいですよ」としか言えません。どうなるかは誰にもわからないのですから、われわれ医者は常に最善を尽くすしかありません。「治りますか?」と聞かれて、「治りません」と答える若い医者が増えていることも事実ですが、このような医者は論外です。 |
吉本 : 健康というだけではなく、仕事なり趣味なりを掴んで生き生きと生きられるようにと願っています。そして、かけがえのない家族を大切にせよ、ということですかね。どんなに気をつけたとしても、一生健康を損なわないでいくということはできません。その健康を損ねたときに何が頼りになるかというと、最後は家族しか頼りにならないのです。逆にいうと頼りにされる関係を、日頃から作っておかなければならないということですよ(笑)。 |
1948年広島県出身 |