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「森美術館」は、さまざまな点で「新しい」スタイルの美術館です。
まず、地上52階、53階(海抜250m)という立地。今までの美術館にはありえません。ましてや「展望台」とセット(※美術館、展望台のみの入館も可能)なんてあまりにも革新的。 そして、展示の中心は時代の最先端をいく「新しい」「現代美術」。このようなスタイルは、美術に関心のない人たちにも「美術館」を愉しんでもらう「きっかけ」を積極的に作ろうとするものであり、「現代美術=儲からない」という図式を克服し、数字を確保するためのビジネス的な戦略でもあります。 |
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また、森美術館は収蔵品を持たない珍しい美術館です。(今後2年間収蔵を行っていくかを検討)所蔵作品をただ陳列して見せるというのではなく、あくまでも「企画」で勝負。
オープニングを飾った「ハピネス:今を生きるために」展(2003.10.18-2004.1.18)は、「幸せ」というキーワードのもと、時空を超えた作品250点が集められ、「人間にとっての幸せとは?」という普遍的な問いを投げかける意欲的な企画でした。 第2弾は、いまや世界的評価を揺ぎないものとした日本人女性アーティスト、草間彌生(くさまやよい)の新作を公開する「KUSAMATRIX」展(2004.2.7-5.9)。 そして、現代日本のクリエーター57組の作品を紹介する「六本木クロッシング:日本美術の新しい展望2004」(2004.2.7-4.11)を同時開催。 4月末から開催予定の注目の第3弾は、『MoMAニューヨーク近代美術館展:モダンってなに?アートの継続性と変化、1880年から現在まで』(2004.4.28-2004.8.1)と見逃せない企画が目白押し。アートを通して社会へ情報発信、アーティストの育成にも努めます。 そして、美術館を統括するのは、館長、デヴィット・エリオットさん。国内大規模美術館で初めての外国人館長というのも前代未聞、話題となっています。 |
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金曜日夜10時。開いてて、よかった。会社帰りにゆっくり食事をした後、美術館へ―。森美術館は、大幅な夜間開館を実施することでこんなライフスタイルを可能にしました。 アフター5は、アルコールで憂さを晴らすより、ジムでプロテイン飲んで筋トレするより、美術館で優雅に感性のエクササイズ。現代美術との触れ合いによって、不要な固定観念を開放し、明日への英気を養う。東京の夜景を眺めながら一日の反省と明日の計画を立てるのもいいでしょう。頻繁に訪れる人のための"メンバーシップ・プログラムに入会すると、年間約1万円で入館フリー。スポーツジムに通うように気楽に美術館に訪れることができるのです。 「美術鑑賞」なんて改まらなくていい、1人ぶらりと夜景を眺め、アートのある空間を感じリラックスする。こんなお洒落で知的なアートのあるライフスタイルをさらりとこなすのが、これからはカッコいいのです。 また、ロマンティックな「夜景」がセットになっているのだから、デートスポットとしてもぴったり。エンターテインメント性は、東京タワーや東京ディズニーランドにだって負けてません。森美術館は、「開かれた」美術館としてあらゆる客層を受け入れる運営体制をとっています。
「狩野派??叶姉妹のご先祖さんかしら??すんごいわねぇ~」(「ハピネス展」にて)横で声高にこんなことを言われ、明らかに展望台からの「流れ」で美術館に押し寄せる「なんかちょっと違う」人々に遭遇すると、エンターテインメント化はいいけれど、「美術」もしくは「美術館」という場にはある種必要とされる「高尚性」や「特権性」が損なわれてしまうのでは?という戸惑いもぬぐえません。
しかし、どんなアートも人に見られてなんぼのもん。どんなにいい「ハコ」を造っても、いい作品を並べても人が入らなきゃ意味がない。「森美術館」という新たなスタイルは、日本のアート界の行き詰った状況を打開しようとする本気の試みなのです。 アートは、一部の美術学生やインテリのための占有物ではなく、みんなの共有物。目指すものは「アート&ライフ」。生活により密着したアートの面白みを多くの人たちに知ってもらうこと。これからもビジネス的戦略と純然たるアート普及の巧みなバランスをとって、日本人の知的レベルの向上に貢献してくれるのを期待するのでした。
「現代美術」は、見慣れない人にとっては理解不可能なものが多いのも事実です。しかし、アーティストたちは何かを伝えたくて作品を制作しています。アーティストのメッセージは何か?立ち止まって考えてみてください。イヤホンガイドやカタログを参考にするのもいいでしょう。また、自分自身の気持ちに素直に観ると、良く分からないけど、気になる、目を奪われる、といった作品に出会うはず。なぜ、その作品に惹かれるのか?自分自身の「心」を振り返ってみて下さい。気付かなかった「自分」を発見できるかもしれません。そして、現代美術はシリアスな社会問題がテーマとなることも多いので、作品を通してさまざまな問題と向き合ってみたいものです。また、価値の定まった古典では不可能でも、現代美術の場合、まだまだ頑張れば「買える」可能性があるということも面白みのひとつです。
新たなことを始めるには多大なパワーを必要とし、戸惑いや不安はつきもの、周囲からの批判も時にあるでしょう。しかし、それでもより高い場所を求め、新しいものを恐れない積極的な冒険精神がここには溢れています。探してみてください。森美術館とここを彩るアートは、新しい何かが始まる鍵を握っています。求めてください。きっと扉は開かれるでしょう。天空の美術館で未来を見渡す視点を獲得しようではありませんか。
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展望台東京シティービューは、良く晴れた朝は富士山や筑波山、夕方は新宿方向に沈む真っ赤な太陽、夜は光り輝く東京タワーや横浜の夜景とさまざまな顔を見せます。東京シティビュー入館料+500円でオープンエアーの森タワー屋上、東京スカイデッキ体験もおすすめ。
52階のミュージアムカフェでは、美しい景色と特製スイーツでゆったり。ミュージアムショップは52階、ミュージアムカフェ横のミュージアムショップをメインに、ノースショップ、サウスショップ、50階に森アーツセンターミュージアムショップ、3階には六本木ヒルズアート&デザインストアがあります。 |
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※展覧会期中無休
※開館時間・入館料は展覧会により変更がある場合があります。 |
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フリーアートライター。明治学院大学大学院文学研究科芸術学専攻博士課程前期修了。専門は日本近世(江戸時代)絵画。その他、古今東西の美術、また美術にとどまらず映画、演劇、音楽、文学など幅広く芸術全般にわたり、ジャンルに拘らず面白いものには接近する。最近は、心理学、精神分析、占いなどにも興味津々。
論文:「若冲についての覚書―「動植綵絵」中の4作品のルーツを探る」 (明治学院大学大学院文芸術学専攻紀要『bandaly』第1号、2002年3月) ●URL●http://www.e-rena.net |