茶券400円を別途に購入すれば、展示室内の椅子や畳に腰を下ろし、作品を鑑賞しながらお抹茶と干菓子を愉しむことができます。季節に合わせた書画に取り囲まれ、四季折々の風情を感じながらの一服。まるで茶会に招かれたかのような贅沢なひとときです。
「茶の湯」とは、もてなすお客を思いやるコミュニケーションの美学であるとともに、自然や時の経過を愛でる「風雅な遊び」。お点前や所作の繰り返しの動作は、「自分を見つめつつ忘れ、自分を超えていく世界」であり、日常とは少し違う自分を見つめる『動の座禅』とも言われます。茶道具は、これら美的行為の重要な「素材」なのです。
「茶をやる精神で仕事をしたまえ」―事業家としての畠山氏がストライキで頭を痛めていたとき、近代を代表する数寄者・益田鈍翁(三井物産創設者)はこう励ましました。畠山氏はこの言葉に決意を新たにし、事業に邁進します。「茶の湯」の精神は、事業家畠山氏の人生の大きな支えでもあったのでしょう。
ここは、俗世から切り離された「市中の隠」。周囲の雑踏から切り離された非現実世界で、茶道具の名品に囲まれ、忘れていたDNAに組み込まれた「茶の湯スピリット」がみるみる呼び覚まされていくのが感じられるのです。