東京都庭園美術館
〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9 TEL:03(3443)0201 FAX:03(3443)3228
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東京都庭園美術館は、1933年に建てられた朝香宮鳩彦(あさかのみや・やすひこ 1887-1981)邸を、東京都が買い受け1983年、美術館として開館したもの。建物全体の設計は、宮中、皇族関連の建築を専門とする宮内省内匠寮工務課が担当し、一階の大広間など主要な7室の内装は、仏人デザイナー・アンリ・ラパン(1873-1939)による。 アール・デコ様式で装飾された建物は、それ自体が美術品。コレクションはないが、建物との調和を第一に考えた作品を展示し、企画展を開催する。 |
玄関に入ると、優雅な4人の美女に迎えられる。美術館のシンボル的存在、ルネ・ラリック作のガラスレリーフだ。足元を見ると、モザイクが美しい。館内に足を踏み入れれば、もうそこは、別世界。照明器具、天井、階段、暖炉などすべてに贅の限りを尽くした空間に思わず、うっとり。 「当館は、“旧宮家”という贅沢な空間で美術品を鑑賞することができる日本では類を見ない美術館です。展示作品はもちろんのこと、建物のいたるところにあるアール・デコ様式の装飾を愉しんでいただけます」 と学芸員・岡塚章子さん。
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一階、次室の「香水塔」が目にとまる。こちらは、ラパンのデザイン。大客室のシャンデリアは、ラリック。扉はアングラン。大食堂のシャンデリアもラリック。壁面のレリーフはブランショ……。これはもう、垂涎のお屋敷というしかない。
「展覧会は、建物に合った作品を展示することを第一に考え、かつ、ジャンルにこだわらない企画をしています。また、たくさんの方々に観ていただけるように、一般の方々に解かりやすいアナウンスを心掛けています」
この美術館が面白いのは、展示される作品によって雰囲気ががらりと変わること。ティファニーの宝石が並ぶこともあれば、イタリアの陶磁器、ロシアの絵本やポスター、近代の日本画が並ぶこともある。それぞれの展覧会ごとに新たな命を吹き込まれる空間を愉しみたい。
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大客室:豪華なシャンデリアのギザギザと天井のギザギザ模様が共通するのが心にくい。細部のデザインに目を凝らしたい。
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大食堂:シャンデリア、壁のレリーフ、ラジエーターカバーなどに注目。直線や円弧を組み合わせた幾何学性がアール・デコ様式の特徴。
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フランス海軍より献上された噴水塔。上部のゼンマイのような渦巻きと胴部の直線の対比が面白い。ラパンによるデザインで、セーブル製陶所で製作された。本来は室内噴水塔だが、往時はここから香りを漂わせてお客様をお迎えしたところから「香水塔」呼ばれるようになった。 |
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幾何学的な花のモチーフがアルー・デコ様式の特徴を示す。上部は、レイモン・シューブによる鉄製の飾り細工。光の具合で豊かに表情を変えるガラス扉は、いまもなお「モダン」な印象を与える。アングランは、教会建築に数多く作品を残した当時フランスで人気の工芸家。 |
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この豪華な建物は、1947(昭和22)年から1954(昭和29)年頃まで外相公邸、首相公邸として使用され、時の総理大臣・吉田茂(1878-1967)の公邸であったこともある。「国会にもタヌキが出るけれど、首相公邸にもタヌキが出る」というのが吉田茂のお気に入りの冗談だったとか。 現在はもちろんタヌキはいないが、建物周辺には、都心とは思えない緑豊かな環境が広がる。敷地面積は、一万坪。茶室のある日本庭園や西洋庭園、芝生広場で、四季折々の草花や彫刻作品を愉しむことができる。 明治以降いち早く海外で教育を受け、洋風生活に身を転じ「近代日本」を示した宮様たち。ここには1920年代、日本の皇族が持ち帰った「憧れのパリ」がある。しかし、パリ仕込みのスーツに身を包んだ朝香宮殿下は、西洋志向とは別に、温泉、盆栽、日本酒といった日本的なものもこよなく愛し続け、晩酌のために夕食は和食とすることも多かったとか。 |
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カフェ:11時からのランチセット二つ組み合わせて1,200円~1,500円(玉地蒸し、香の物付き)甘味類は400円~700円。
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ミュージアムショップ:グッズを眺めるのも愉しいひと時。いつも新鮮なラインナップでリピーターを飽きさせない。
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06年3月オープンの金田中プロデュースの和カフェ「茶洒(サーシャ)Kanetanaka」は、老舗料亭の味をお手頃価格で提供する。ショップ「ポルティエ」では、正面玄関のルネ・ラリックの女性像や館内照明器具がデザインされたトランプ(1,470円、税込)やラジエーター・カバーのデザインが施されたブックマーカー(683円、税込)などが好評。その他、展覧会や四季に合わせた企画で、いつ行っても新鮮な商品に出会える。
中村大三郎『婦女』 |
2007年4月14日(土)から7月1日(日)まで「モダン日本の里帰り 大正シック―ホノルル美術館所蔵品より―」展を開催。ホノルル美術館の日本美術コレクションから同館の学芸員が選定した、大正時代から昭和戦前期の西洋モダニズムやアール・デコの影響を受けた日本画、ユニークなデザインの着物や工芸品など、約80点を展示する。2002年にホノルルで開催された後、アメリカ国内を巡回し好評を博した本展では、私たち日本人がこれまで気づかなかった日本美術の魅力を発見できる。 |