ジムに通わなくても自分でできる鍛練法ジムに通わなくても自分でできる鍛練法

ジムに通わなくても自分でできる鍛錬法 講師・文/東京大学医学部付属病院 リハビリテーション科 廣瀬 健先生

第4回 シェイプアップできる筋力トレーニング!

 激しい運動ができない人や、忙しくて時間がとれないという人のために、その場で簡単にできるエクササイズとして「筋力トレーニング」をご紹介します。毎日の通勤や自宅でのちょっとした合間にできるエクササイズで、しかも毎日15分続けるだけで筋肉量を増加させずにシェイプアップ効果が得られます。日頃の運動不足を解消するためにも、自分に合ったエクササイズを実践してみましょう。
 自分の健康はやはり、Do It Yourself !! さあ、今からさっそく始めてみませんか?


実践プログラム3

筋力トレーニング

通勤や仕事中にも、シェイプアップ運動を!

 週1、2回フィットネスクラブに行って、マシントレーニングを行うのはもちろん良いことですが、特別な格好で、わざわざ時間をさいてする運動は長続きしません。ダンベル体操などをしなくても、自宅や会社で毎日15~20分程度、軽く腹筋や腕立て伏せなどの筋力トレーニングを継続すると、それだけで十分効果が得られます。2~3ヶ月でシェイプアップ効果が得られます。この筋力トレーニングは、筋肉量を増加するために行うのではなく、運動不足による筋肉の弛みを引き締め、格好よくシェイプアップするために行うことなのです。
 通勤や仕事中などにできるシェイプアップ運動の例をあげましょう。
 図1)階段を使う時に、かかとを階段からはずして、つま先で1段ずつ押すように、軽くひざに力を入れて上り下りしてみましょう。慣れてきたら、さらに1段ずつ飛ばして上がると、ヒップや足が引き締まります。図2)階段を使わずエスカレーターに乗る時も、上りでは階段からかかとを少しはみ出すように立ち、そのままかかとを上げ下げしても足が引き締まります。図3)電車でつり革につかまっている時や信号待ちをしている時は、かかとを浮かしてお尻に力を入れ、背筋を伸ばしお腹をへこましても同様の効果があります。エレベーターでは、背中を壁につけて、ひざを軽く曲げてそのまま維持すると太ももの筋力トレーニングになります。

図1 かかとを階段からはずし、つま先で1段ずつ押すように。/図2 かかとを少しはみ出して立ち、そのままかかとを上下する。/図3 かかとを浮かしてお尻に力を入れ背筋を伸ばしお腹をへこませる。

 図4)また、パソコンなどのデスクワークで椅子に座っている時には、両足をやや浮かせ気味にして足首をクロスさせて、下になった足を前に蹴り上げるように力を入れ、上になった足はそれに逆らって押さえつけるように力を込めて静止させたり、両手を机の上に置き、少し腰を浮かせて前かがみになる姿勢などを5秒位維持するようにすると、太もも全体の筋力トレーニングになります。図5)腕のトレーニングとしては、両手を椅子の肘掛けをつかんだまま、ほんの少し腰を浮かせながら腕に力を入れると上腕のトレーニングになります。
 図6)車を運転して信号待ちしている時には、ハンドルを握っている両腕に力を込めて内側へ押してみましょう。手の位置をハンドルの上、両端、下とかえてやると胸の筋肉も鍛えられます。

図4 足首をクロスさせ、下になった足を前に蹴り上げるように力を入れ、上の足で押さえつける。/図5 椅子の肘掛けをつかんだまま、ほんの少し腰を浮かせながら腕に力を入れる。/図6 ハンドルを握る両腕に力を込めて内側へ押すようにする。

テレビを見ながらできる筋力トレーニング!

 自宅で無理のない筋力トレーニングは、テレビを見ている時間を利用しましょう。図7)床に座り片ひざを両手で抱え、もう一方の足を前に伸ばすようにして、両手を手前に引くことを左右交互にしてみましょう。図8)両手を胸の前で合わせて、ひじを張って押し合います。図9)また手を胸の前でカギ形に組み、ひじを張って左右に引き合います。

図7 一方の足を前に伸ばし、片方のひざを両手で抱え、ぐっと手前に引く。/図8 両手を胸の前で合わせて、ひじを張って押し合う。/図9 手を胸の前でカギ形に組み、ひじを張って左右に引き合う。

 図10)床に横向きにまっすぐに寝て、片手で頭を支え、上になった足をゆっくり上下し、向きを替えて反体側も同様に行います。図11)さらに仰向けに寝てひざを立てて、両手を頭の後ろで組み、上体を少し起こして止める腹筋や図12)腕を肩幅に広げて両手を床につき、ひじを深く曲げたり伸ばしたりする腕立て伏せなどの筋力トレーニングを反復するなど、コマーシャルの間だけ行っても十分に筋力トレーニングができます。個々のトレーニングを行う時はゆっくりと腹式呼吸をしながら,6~7割の力で6~10秒持続させて、2、3回繰り返すとよいでしょう。テレビを見ていない時でも、日常生活で暇があったら意識して筋肉も鍛えるように努力しましょう。

図10床に横向きに寝て片手で頭を支え、上になった足をゆっくり上下する。/図11 仰向けに寝てひざを立てて、両手を頭の後ろで組み、上体を少し起こして止める。/図12 両手を床につき、ひじを深く曲げたり伸ばしたりする。

運動を始める前には、日頃の運動量のチェックを!

 筋力トレーニングで筋肉の量を増やすには、ボディービルダーのように暇さえあれば四六時中激しい筋力トレーニングをしないと、目に見えて筋力は増加しないのです。このような通常の範囲を超えた激しい運動は、足腰の関節を痛めたり、筋肉や腱を傷つけたり、かえって体調を崩してしまいます。最悪な場合は心臓発作を起こす恐れもあります。たとえ、軽い筋力トレーニング運動でも、始める前には日頃の自分の運動量をチェックしてから少しずつ運動を始めることが大切です。また、合併症がないかチェックする必要もあります。医学的な合併症がある場合は、無理のないように運動計画を立てるため医師に相談してから始めてください。


<運動を始める前に医師に相談が必要な場合>
狭心症と診断されている場合
心疾患の既往がある場合
不整脈がある場合
脳卒中の既往がある場合
心疾患で3ヶ月以内に薬を服用していた場合
糖尿病で薬や注射の投与を受けていたり、合併症がある場合
歩行に際して筋、神経、骨などの整形外科的異常がある場合
腎臓、肝臓やその他の代謝性障害がある場合
安静時血圧が160/90mmHg以上である場合
風邪や流感などの急性感染症がある場合
以前、運動を差し控えることを、専門家に言われたことがある場合
運動をするのに自分の体に疑問を感じた場合
廣瀬 健先生の略歴

廣瀬 健 医学博士・循環器専門医・麻酔指導医・心臓リハビリテーション指導士


1982年 獨協医科大学医学部 卒業
1990年 栃木県芳賀赤十字病院麻酔科 部長
1991年 獨協医科大学第一内科助手
1992年 米国メイヨークリニック留学
1997年 獨協医科大学第一内科講師
1999年 東京大学医学部附属病院リハビリテーション科 医員
2001年 東京大学医学部附属病院リハビリテーション科 助手
2003年 獨協医科大学リハビリテーション科 講師 および
東京大学医学部附属病院リハビリテーション科 非常勤講師