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花岡詠二のスウィング・ジャズ講座1/心ウキウキ楽しいスウィング・ジャズ
♪簡単なジャズ用語が解れば興味100倍♪
第1章 楽しいスウィング・ジャズ、その歴史
ダンス・ミュージックに発展したスウィング・ジャズ

 さて、「ジャズ」というと、何かとてつもなく難しく思ってしまうかもしれませんね。そこで、その中でも一番皆さんに馴染み深いと思われる『スウィング・ジャズ』をご紹介し、いくつかのジャズ・スタイルの中からその位置づけを紹介します。
 ジャズが誕生して100年余り。ものすごいスピードでスタイルの変遷を遂げてきたジャズですが、大別すると「ディキシー」、「スウィング」、「モダン」の3つに分けられます。このうちディキシーとスウィングはダンスにも適しており、モダン・ジャズはどちらかというと鑑賞用の感があります。
 古来、音楽と踊りは密接な関係にあり、とくに、スウィング・ジャズはダンス・バンドとして発展したこともあわせて、つまりはとても踊り出したくなるようなワクワクするリズムとサウンドをもっているのです。昔、皆さんが観た映画のサウンドトラックや、ラジオでしばしば聴き慣れたメロディーに『スウィング・ジャズ』の名曲がたくさん含まれています。

グレン・ミラー

 特に、映画『グレン・ミラー物語』(1953年/アンソニー・マン監督)、『ベニー・グッドマン物語』(1955年/ヴァレンタイン・デイヴィス監督)、『愛情物語』(1956年/ジョージ・シドニー監督)、『五つの銅貨』(1959年/メルヴィル・シェイヴィルスン監督)等ご覧になった方は多いと思いますが、その中にお馴染みの名曲がキラ星のごとく挿入されていました。「ムーンライト・セレナーデ」、「真珠の首飾り」、「メモリーズ・オブ・ユー」、「レッツ・ダンス」、「トゥ・ラブ・アゲイン」、「マンハッタン」「ファイヴ・ペニーズ」など、題名を聞いただけであのシーンを思い出される方も多いかと思います。


ジャズの発祥地は、アメリカ南部の港町ニューオリンズ

 ジャズは、アメリカ南部の港町ニューオリンズで誕生しました。いかにもアメリカらしい多民族のゴッタ煮文化から生まれたあらゆる要素を含んだ二十世紀最大の音楽芸術です。
 そして、そこにはアフリカから連れてこられた黒人達による影響が多大である事はいうまでもありません。1920年代、このニューオリンズ・ジャズがミシシッピーをさかのぼって、シカゴに移り『シカゴ・ジャズ』となりました。この時代は、狂乱の20年代=「ローリング・トゥエンティー」とも「ジャズ・エイジ」とも呼ばれ、『スウィング・ジャズ』が芽生え始めました。禁酒法の中、街は歓楽街として発展し、やがて30年代舞台はニューヨークに移り、モダンで華麗なファッションと共にダンスが大流行しました。ダンスにミュージックはつきものです。シカゴ時代から続いた演奏に飽きたらなかった大衆は、新しい音を求めていました。

 そこで生まれたのが爽やかなサウンドと、都会的に洗練されたオーケストラ、それが『スウィング・バンド』だったのです。同時に、「デューク・エリントン楽団」、「ベニー・グットマン楽団」、「グレン・ミラー楽団」をはじめ、多くのフルバンドが結成され、スタープレイヤーも多く輩出されました。そして「フランク・シナトラ」など超人気歌手も出てきました。前述の通り、『スウィング・ジャズ』は、ダンスと密接に結びついて発達した音楽なのです。映画『グレン・ミラー物語』『ベニー・グッドマン物語』に、そのようなダンスシーンを数多く見ることができます。

ハリー・ジェームス
アメリカでの『スウィング・ジャズ』の変遷

 そして、太平洋戦争が勃発し、バンドメンが次々と召集されフルバンドが維持しにくくなりました。空軍オーケストラの指揮者でありアメリカのシンボル的大スターだったグレン・ミラーは、中尉として戦争末期に近い1944年12月15日英仏海峡で行方不明となり悲劇的な結果となりました。この事故を契機に、アメリカでの『スウィング・ジャズ』の時代は終わりを告げたのです。
 しかし、日本では戦後になってこれらの音楽映画が封切りされたため、西洋音楽に飢えていた日本人はこの明るくて、スウィングするリズムを好み、日本にもたくさんの名演奏と、多くのスタープレイヤーが出て人気を博しました。
 その後、『スウィング・ジャズ』はモダン・ジャズ初期のビ・バップに移り変わっていきます。現在でも新しいジャズ・サウンドが生まれ続けていますが、『スウィング・ジャズ』は、それが持つ暖かさ、華麗さ、リズムの心地よさを愛する人々によって受け継がれています。『スウィング・ジャズ』の位置づけを系統的に確認してから、あらためてCD/レコードなどを聴いて頂ければ、楽しさが倍増するかと思います。

アメリカでの『スウィング・ジャズ』の変遷
第2章 第2章	花岡詠二・オススメ『スウィング・ジャズ』名曲50選
これだけ知っていればアナタはスウィング通!!

 これで、簡単ながら『スウィング・ジャズ』の位置づけとジャズの推移が理解してもらえたかと思います。そこで、今度は『スウィング・ジャズ』にどのような曲があるかを実際理解してもらう為に、その曲をご自宅で聴いて頂きたいと思います。学校の授業ならば、その場で聴いてもらって、その素晴らしいサウンドで皆さんを陶酔の世界に引き込めるのですが、ウェブ上では残念ながら制限があります。
 そこで私、花岡が『スウィング・ジャズ』の名曲50曲を選びました。お持ちのCD/レコードの中に同じ曲があるかと思います。同じ曲でも楽団、プレイヤー、シンガーの解釈によって雰囲気が全く違うものとなっています。聴き比べるのも面白いものです。ぜひお楽しみ下さい。また、ここにあげたタイトルだけでは頭にメロディーが浮かばないこともあるかもしれません。聴いてみると「あ、あの曲か」と知っている曲もありますから、食わず嫌いでなく、ぜひ一度聴いてみて下さい。どこかで聴いたメロディーがあるはずです。

花岡詠二・オススメ『スウィング・ジャズ』名曲50選
 花岡詠二のオススメ・スイング名曲の50曲です。タイトルの後の演奏者、ヴォーカリスト名は参考です。ヒットした当時の代表的なミュージシャンたちです。同じ曲を多くのプレイヤーが演奏していますが、『スウィング・ジャズ』にこだわるならば、できるだけ当時に録音された曲を選んだほうが、その雰囲気が味わえるでしょう。





花岡詠二(はなおか・えいじ)氏のプロフィール
1944年東京生まれ、日本大学芸術学部音楽学科卒業。わが国を代表するクラリネット・プレーヤー。1975年ディキシー・キングスに参加。現在では、ベニー・グッドマン・スタイルのスイング・コンボ「花岡詠二スヰング・オールスターズ」をメインに多彩なライブ活動を展開している。近年は海外のジャズ・フェスティバルに招聘され好評を博している。日本大学芸術学部講師も兼任。
花岡詠二HP