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- Vol.8 蕎麦打ちを愉しむ①
漆山さんとお蕎麦とのきっかけはなんでしたか。
漆山(敬称略):私とお蕎麦の縁は父からです。先代である父は、山形に創業150年を誇る老舗の和菓子屋『本家大松家』を構えていました。和菓子で、酉の市の頃に食べる「切山椒」というのがあるのですが、その切山椒を作るのが上手な職人さんがいて、蕎麦打ちと作り方が似ているので、父がその職人に蕎麦を打たせてみたのです。そうしたら、非常に美味しい手打ち蕎麦ができたのです。50年程前に鶴岡市水沢に蕎麦屋を開業しました。
蕎麦処を始めた経緯を教えていただけますか。
漆山:私は25歳位までスペインで墨絵を描いていました。でも芸術で食べていくのは難しいものです。先代の父の薦めで、そばの世界に転身することにしました。24年前になりますが、当時銀座には蕎麦処があまりなかったので、姉2人と銀座にお店を出すことになったのです。古民家っぽい内装でしたので、山形の田舎蕎麦のイメージにぴったりでした。昼は親子丼とお蕎麦、夜はお酒とコース料理を始めたのですが、昼の部が大人気になり、当時銀座に行列ができてすごかったんです。現在は夜をメインに、東京銀座大松屋「本店」をはじめ3店で、庄内地方の地酒とともに卓上で炙る炭火焼料理と、山形の田舎蕎麦を愉しんでいただいてます。
銀座から、生まれ故郷の山形に戻られたのですか。
漆山:私は自然が好きなものですから。銀座のお店で修行を積んだ後、お店は姉たちに任せて、最初屋久島のほうでお店をやろうとしましたが、その頃屋久島は急に注目されて土地が10倍近く高くなったのでやめました。父の薦めもあって、自然豊かな生まれ故郷に戻り、山形酒田市
挽きぐるみの「板そば」とは、どういう蕎麦ですか。
漆山:「板そば」は、もともとはお祝いの蕎麦です。風味豊かな田舎蕎麦を木の器に敷き詰めます。古来から伝わる農家の素朴な「乱切り手打ち蕎麦」を源流に、先代が「板そば」に磨きをかけて完成させました。蕎麦は地元の
手打ち蕎麦に対するこだわりはなんでしょうか。
漆山:山形県酒田市
最後にそば湯で余韻を愉しみます。そばを茹でた後のお湯ですが、そば湯 にはビタミンBや動脈硬化を防ぐというルチン等が含まれているので、余ったつゆに注して飲むのが醍醐味です。 手打ち蕎麦の極意はなんですか。
漆山:美味しい手打ち蕎麦の極意は、「四たて」です。「
秘伝のつゆはどんなものですか。
漆山:打ちたての蕎麦本来の味と香りが引き立つように、合わせるつゆはあえて薄味にしています。『大松家』のつゆは、
溜り醤油(※)・・・醤油(4~5):みりん(1):砂糖(0.5)程度の割合で合わせて、80℃くらいまで火入れして寝かせてまろやかにしたもの。
蕎麦の旬はいつですか。
漆山:夏蕎麦(7月初旬)と秋蕎麦、年に2回収穫できます。秋蕎麦のほうが、収穫量も多いですし、美味しいです。収穫したての「新蕎麦」は味わいが全然違います。手打ち蕎麦の「三たて」に、この「
「地讃地賞」というテーマですが、大切にしていることはなんでしょうか。
漆山:たとえば、わらびたたきとか、ごま豆腐とか、からかいなどの庄内地方の地元にしかない郷土料理を現代風にアレンジした「新郷土料理」をやっていきたいです。地元産の食材を使うと、自然と郷土料理に近づきます。なくなりつつある郷土料理を現代風にして前菜でお出ししています。炭火焼きで自然の恵みをそのまま焼いて、塩をつけて食べるのが本当は一番美味しかったりするわけです。時代と兼ねあった風土、そして四季折々の素材を大切に活かしていきたいです。そして、地元の銘酒を飲みながら、会席料理を召し上がり、ほろ酔い加減で最後につるりと手打ち蕎麦で締めくくるのが最高ではないでしょうか。
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