- HOME
- 楽しむ
- 今日から始める男の趣味
- Vol.12 水彩色鉛筆で旅先スケッチを愉しむ


![]() ![]()
かつてJALの乗員だった私がフライト先でよく訪れたのが画材屋です。絵は趣味で描いていたものの、荷物になる画材を持っていくようなことはしていませんでした。それでも、フライトを心配する祖母が安心するようにと、露店で買った葉書にイラストを描いて送ったものでした。
目の悪い祖母のことを考えると、「何をして」「どうだったか」を伝えるのには絵日記がいいな、と漠然と考えている時、偶然フランクフルトの古い画材屋で見つけたのが100色セットの水彩色鉛筆(現在は120色)でした。今から15年前のことです。マホガニー色の木箱に並べられた色鉛筆がまるで虹色の鍵盤のように見えて、まさに一目惚れしてしまいました。しかし、当時の乗員の免税基準が15,000円だったので、高価な100色を諦めて、泣く泣く60色の缶入りを購入しました。色鉛筆にしては、高い買い物だと思いましたが、使ってみると、何と発色の良いこと。水で濡らしてみるとさーっと溶けるだけでなく、色がはっきりしてきて、とてもきれいなのです。さっと出せて使える手軽さや水筆の便利さも加わり、私にとっては大切な宝ものになりました。この水彩色鉛筆をいまだに愛用しています。そして、ファーバーカステルブランドを知るにつれ、心底惚れこんでしまったのです。
![]() 自宅アトリエにて。今回のスケッチ旅行で使用した水彩色鉛筆、 ビッグブラシ、鉛筆、練り消し。
私には持病があり、何度か入院生活を経験しました。入院中に心の安定の大切さを実感できたのも水彩色鉛筆のおかげです。不安を打ち消すかのように、いつでもベッドの傍らにおいて、暇さえあればいろいろなものを描いていました。描くものは窓からの景色だったり、お見舞いの果物やお花だったり。それを見た同室の方々もいっしょに描き始めたりして、看護師さんたちとの会話も愉しいものになりました。
![]()
病室のベッドの上で手軽にできる趣味って、なかなかないと思いませんか?絵を描けることは生きている証。さまざまな物を見て感じることは、「生とは何か」ということを実感する瞬間であるように思います。水彩色鉛筆は散歩や旅先で手軽にできる趣味の道具としてだけでなく、描く人の心を癒し、描き手のメッセージが伝わるツールとしての価値があると感じています。
|
||||||||||
![]() ![]() ファーバーカステル社は世界最古の筆記具メーカー。 今日では世界に15の工場があるグローバル企業に発展している。 創設一族が伯爵家で、現在もファーバーカステル城が健在である。
ドイツのニュルンベルクの街から少し離れたところに「ファーバーカステルアカデミー(Faber-Castell Academy)」があります。本社と工場が敷地内にあり、ファーバーカステル(Faber-Castell)城の最上階の屋根裏部屋にアトリエがあります。そこで朝9時から夕方6時までさまざまなカリキュラムとレベルに分かれた講義が行なわれています。現在城は改修され、企業のパーティ等が行なわれているようです。訪れた日の翌日には、伯爵の甥の結婚式の準備が行なわれていました。
![]() ファーバーカステル城で絵画アカデミーが開催されている。 |
||||||||||
|
||||||||||
![]()
天気が良い日には戸外でのスケッチ講座もあり、一日に思う存分、今回は5枚ほどの絵を描いていました。実際にドイツで描いた私の作品を何点かご紹介しましょう。
|
||||||||||
|

![]() ![]() 旅先では画材は極力少なく、持ち運びも管理も手軽にできるものを準備しましょう。水筆、水性顔料ペン、鉛筆(2B)、練り消しゴム、水彩紙、パレット、ティッシュ、水彩色鉛筆が基本です。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
*詳細はこちら
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]()
最近、画材店のみでなく文具屋や本屋でも見かけるようになった、水彩色鉛筆。手軽に画材として、文具として楽しめる、まさにスーパー画材です。水でとける色鉛筆ならではの使い方をご紹介します。
![]()
atelier AQUAIRの基本3種
●ドライ=乾いた色鉛筆で直接 ●ドライ+水=ドライのあと水筆で ●ウェット=ぬれた筆でとって ![]() ![]() |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]()
![]()
写真と見比べていただくと分かると思いますが、風景画を描く時には全てがひとつの点(消失点)に向かっているということを意識することが大切です。遠近法の手順は、2009年6月に発売される『はじめてさんの水彩色鉛筆Lessonおでかけ編』(マール社)に分かり易く載せていますので、是非ご覧いただければ納得するところが多いと思います。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]()
スキー場から見える編笠山(あみがさやま)を望む風景画を水彩色鉛筆でスケッチしてみました。今回は男性の方を対象に、力強いタッチが出せる「ビッグブラシ」という太ペンを使った風景画のスケッチの手順をご紹介します。 ビッグブラシがない場合には、水性顔料ペンや鉛筆でも異なった画風が愉しめますが、油性のマジックペンは滲みすぎるので、水彩紙には不向きです。実際に描いてきた旅先スケッチの手順をみてみましょう。
![]()
■編笠山
八ヶ岳を構成する山の一つ。標高は2,524m。八ヶ岳の最南端に位置する山である。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
いきなり景色は難しいと思う方は、目の前にあるものから描いてみましょう。たとえばホテルのレストランの素敵なディナー、お土産に買ったもの、やったこと、お部屋の間取りなどを組み合わせただけで素敵な想い出アルバムになります。ポイントは周りの白を残すこと。言葉をたくさん書くこと。絵日記の気分で自由に描いてみましょう。失敗なんてないのです。
|

![]()
スケッチを始めると、ものを見る目が変わったと受講者の方々はおっしゃいます。この木はどうやって描こう?色は?質感は?葉の向きは?形は?花の色は?などと、どんなふうに花や葉がついているのかに集中して観察します。絵を描かない限り、たとえばガラスの窓を熱心に観察することなどはないでしょう。このように試行錯誤して描いたものは必ず自分なりの技法となります。知らず知らずのうちに、はじめて描いた時とは違う技法を獲得しています。そして、記憶から再現して描くこともできるようになります。
一日のうちで、何時間か費やしてものを描くことで、いろいろな情報をインプット、そして自分なりにアウトプットしているのです。一度描いたものは愛着を覚え、自分の技法になったように思えるのです。世界中に自分のお気に入りの場所やものがあるなんて、なんて素敵なことでしょう。 私は現在、中2と5歳の子育てと仕事で毎日笑いが出るほど大忙しです。絵を落ち着いて描いている時間が殆ど取れないことがあります。だからこそ、また絵を描きたい、ちょっとでも時間があれば絵を描きたい、という思いが強いのかもしれません。この間も、ほかの仕事の締め切りが迫っているにもかかわらず、下の子どもが通う幼稚園の卒園生の絵を思わず描いていました。その子どもたちの喜ぶ顔がみたかったから。それをみてくれたお母さんや子どもたちの本当に嬉しそうな顔!自分の絵でこんなにまで人に喜んでもらえるなんて、嬉しい限りです。喜んでくれる人たちがいる。自分の絵を見てくれる人たちがいる。本当にそれが愉しみで描いています。もちろん、絵を描いている自分が一番愉しんでいるのです。是非、自分と周りの人も巻き込んで水彩色鉛筆を愉しんでみてください。皆様にとって、水彩色鉛筆が、生きる愉しみのひとつになりますように…。 atelier AQUAIR 杉原 美由樹
|
||||||||||||
![]()
|
||||||||||||
![]()
|