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- ジムに通わなくても自分でできる鍛練法
- Vol.1 運動の基礎知識




生活習慣病や多くの病気の遠因は“運動不足”にあると言われています。しかし、いざ運動をするとなると何をやっていいのか・・・。街のフィットネスクラブはちょっと高そうだし面倒だし、スポーツは得意じゃないし・・・などと躊躇してしまいます。そこで、ジムに通わなくても手軽にできる“自分でできる鍛錬法”をご紹介しましょう。実際に運動を始める前に、どのような運動が適切なのか、自分に合った運動の強さなどの基礎知識を廣瀬先生に詳しく説明していただきます。
自分の健康はやはり、Do It Yourself !! さあ、今からさっそく始めてみませんか?


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世の中たいへん便利になり、車社会やコンピュータ化による長時間座位などの不精な生活になり、ついつい運動不足になっています。40歳を過ぎるとこの運動不足に肥満などが加わり、年齢相当以上の動脈硬化が進んで、生活習慣病(高血圧、高脂血症、肥満、動脈硬化など)にかかりやすくなります。
運動は体力の向上や肥満の予防・改善だけでなく、動脈硬化の発症や進行を抑え、生活習慣病や心臓病を予防します。この頃よく「運動しましょう」と言われていますが、一般に「運動」と聞くと、ゼイゼイしながら走ったり、飛んだり、跳ねたりする運動や、野球・テニス・サッカーなどのスポーツを連想しがちじゃないでしょうか。仕事は忙しいし、ウエアやシューズを揃えなきゃなんないし面倒くさいと考えていませんか?しかし、健康のためにはむしろ、そんなに激しい運動でなくて良いのです。じっと横になっている以外は運動をしていることになりますから、簡単にできる軽い運動で十分に効果があるのです。


たとえば、100mを息もつかずに疾走する無酸素運動(アネロビクス運動)ではありません。健康づくりに必要な軽い運動には、次の3つの種類があります。
1. | 有酸素運動(エアロビクス運動)/ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど |
3. | 柔軟運動/簡単なストレッチなど |
3. | 筋力トレーニング(レジスタンス運動)/腹筋や腕立て伏せなど |

この3つの中で、特に有酸素運動量を多く行うことが良いでしょう。


学生の頃に、マラソンした時を思い出してください。最初は呼吸も整っているので、スースーハーハーと調子よく走れますが、そのうち筋肉が疲労してきて、息が苦しくなってゼェゼェしたことを覚えていますか?
人間は、酸素から運動のエネルギーを供給しています。有酸素運動とは、スースーハーハーとリズミカルな呼吸を繰り返し、酸素をたくさん取り込みエネルギーに換えて運動している状態です。
運動の強さ(激しさ)を上げていくと、取り入れた酸素の供給が追いつかなくなり、体内にある酸素を使ってエネルギーを作る状態に切り替わります。このポイントを、無酸素閾値と言います。このポイントを超えると無酸素運動となり、筋肉から乳酸が血中に放出され疲労感が出現します。さらに、体内に蓄積した乳酸の分解が進み、二酸化炭素が血中に増えてきます。それを呼吸から出そうとするので呼吸が荒くなるのです。(図A―1 無酸素運動) |
一方、有酸素運動とは無酸素閾値を越えない運動を言います。この範囲の運動ですと、疲労物質である乳酸が、血中に放出されないために長時間運動しても疲れません。心臓、血圧に対しての負担も少なく、脂肪が燃焼しやすい運動なのです。(図A―2 有酸素運動) |


有酸素運動の強さとは、どれくらいのものでしょうか?自分の体力を最大限に出し、「もう、これ以上がんばれない」と感じる運動の強さをその人の最大運動能力と言います。有酸素運動は最大運動能力の約50~70%の強さです。この目安には自分の感覚(症状)と脈拍からある程度確認できます。
スウェーデンのボルグという人が作ったスケールで、運動したときの感覚(つらさ)を数字と簡単な言葉で表現したものです。ボルグ・スケールの11~13で「ややきつい」と感じた時と無酸素閾値がほぼ等しいことが医学的に証明されています。「きつい」と感じ始めたら有酸素運動を超えたと思ってください。(表1) |
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![]() ![]() (表1)
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下記の式から求められる脈拍数になるような運動が、あなたにとって適切な運動の強さです。
1分間脈拍数を測定することができない場合は、3~5分運動した後、立ち止まって直ちに15秒間脈拍数を測定し、下記の式で1分間の脈拍数を予測できます。
脈拍測定は左手の手首の付け根(親指側)に右手の人差し指・中指・薬指をあてます。(図B) |
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(図B)
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廣瀬 健 医学博士・循環器専門医・麻酔指導医


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