ジムに通わなくても自分でできる鍛練法ジムに通わなくても自分でできる鍛練法

ジムに通わなくても自分でできる鍛錬法 講師・文/東京大学医学部付属病院 リハビリテーション科 廣瀬 健先生

第3回 簡単なラクラクストレッチ!

 激しい運動ができない人や忙しくて時間がとれないという人のために、ジムに通わなくても“自分でできる鍛錬法”として、その場でできる簡単なエクササイズをご紹介しましょう。「柔軟運動」の中でも、特に場所と時間を選ばない簡単なストレッチの実践法を廣瀬先生に説明していただきます。忙しい時でも、こまめに体を動かすことを習慣にして、運動不足による病気の予防や体の老化現象を防ぎましょう!
 自分の健康はやはり、Do It Yourself !! さあ、今からさっそく始めてみませんか?


実践プログラム2

ストレッチ

運動のために、こまめに体を動かしましょう!

 有酸素運動とともに身体活動能力を上げる(こまめに動く)ことも効果があり、代謝が高進し「太りにくく、やせやすい体質」を獲得でき、長寿になることが欧米で報告されています。
 私たちは、食べ物を消化・吸収してエネルギーに換え、そのエネルギーを消費しながら生命を営んでいます。この体の活動を「代謝」といい、「基礎代謝」と「活動代謝」の2つからなります。
 「基礎代謝」は睡眠中や安静にしているときに消費されるエネルギーで、体温維持や呼吸、脳、内臓機能を働かせる生命維持の基礎となるものです。「活動代謝」は、食事、家事、仕事、移動およびレジャー活動などの生活活動で使われるものです。「よく足を使う」「階段を上がる」などというごく基礎的な日常動作を増やすことにより、運動になり効率的にエネルギーを消費することができます。
 5分でも10分でも、暇を見つけて積極的に体を動かし、身体活動能力を高めることは良いことです。どんな活動でもエネルギー(カロリー)を消費します。約60kgの人が10分座っているだけでも約15kcal消費しますが、立っていれば17kcal、歩行(3.2km/時)で約30kcalも消費量が増加します。表は、ある一定の活動運動を10分間連続して行った際の消費エネルギーを示したものです。


10分間連続運動による消費されるエネルギー
活動(体重)

56kg

84kg

112kg

活動(体重)

56kg

84kg

112kg
睡眠
10
14
20
料理
32
46
65
座位(TV観賞)
10
14
18
雪かき
65
89
130
座位(おしゃべり)
15
21
30
庭いじり
30
42
59
洗顔
26
37
53
庭の草むしり
49
68
98
起立
12
16
24
歩行(3.2km/時)
29
40
58
階段降りる
56
78
111
歩行(6.4km/時)
52
72
102
階段上がる
146
202
288
ジョギング(8.8km/時)
90
125
178
ベットメイキング
32
46
178
サイクリング(8.8km/時)
42
58
83
床みがき
28
53
75
ゴルフ
33
48
68
窓拭き
35
48
69
テニス
56
80
115
掃除(ちり払い)
22
31
44
ダンス(ゆっくりと)
35
48
69
(単位 : kcal)

ストレッチを日常生活の中に取り入れてみましょう!

 意識して席を立ち、休日はあまり億劫がらずに外出して歩くなど「座るより立って、立つより歩く」と日頃からこまめに体を動かす習慣を身につけて、日常生活の運動量をどんどん増やしましょう。どんなに忙しい人で歩く時間がなくても、何かを待っている時間はあるはずです。例えば、信号待ちをして立っている時やエレベーターに乗った時には、肩の上げ下げをしたり、首回しストレッチを行ったり、さりげなくかかとの上げ下げをしてみましょう。
 電車で立っている時には、つり革につかまって真後ろの広告を見てみましょう。首だけ回して見るのではなく上体をねじって振り返るとウエストが絞り込まれ、わき腹がのびます。また、つり革ではなくその上のバーに捕まると、腕と背中が伸びるので背筋がのびます。(図1)



 仕事中は、椅子に座ったまま体を反らしたり、上体を左右にひねったり、ひざをかかえたりしてみましょう(図2)。机に座って電話している最中でも、手をまっすぐに伸ばしたり曲げたりするのも効果的です。


長時間の車や乗り物に効果的なストレッチ

 車や乗り物に乗っている時もずっと座って寝てばかりでなく、シートに深く座り、両足を前の座席の下に当ててひざをやや曲げたままグッと押しつけて、真っ直ぐにしてみてください。(図3)ハンドルを握っていたら、背中をバックシートに押しつけ手をのばしたりしましょう。

 飛行機に乗っている時に、長時間同じ姿勢で座ったままでいると、足の血流が悪くなり血液が固まりやすく詰まったりします(血栓)。


 肺まで移動して詰ると「肺血栓症」という呼吸障害を起こすことがあり、死に至ることもある恐ろしい病気です。狭い所でじっとして起こることが多いため「エコノミークラス症候群」「旅行者血栓症」とも呼ばれていますが、飛行機以外でもこの病気になることがあります。
 その原因の1つが、血行不良と言われています。この予防のためには、手を上げて背中を伸ばしたり、足を伸ばしたりするストレッチやトイレに行くなど少し歩くようにしましょう。(図4)


家事をしながらも、ラクラクストレッチ!


 主婦も家事などの日常生活をしながらストレッチができます。たとえば、掃除機をかけている時に足を1歩前に踏み出し、ひざを曲げていくと太ももの筋肉がのび、反対足のアキレス腱がのびます。(図5)

 洗濯物を干す時は、手を真っ直ぐ上げて背中を伸ばしましょう。(図6)

 また、干す物をわざと床に置き、1枚ずつしゃがんで取って干し、肩より高いところにかかとを上げて干すとかなりの運動になります。そして、洗濯物が乾いたらその人ごとに仕分けしてたたむ時、わざと前後左右に分けて交互に上体をゆっくり大きくひねりながら整理するとわき腹のストレッチになります。(図7)


廣瀬 健先生の略歴

廣瀬 健 医学博士・循環器専門医・麻酔指導医


1982年 獨協医科大学 医学部 卒業 同第一内科入局
1989年 獨協医科大学大学院修了(麻酔学専攻) 同第二麻酔科助手
1990年 栃木県芳賀赤十字病院 麻酔科部長
1991年 獨協医科大学 第一内科助手
1992年 米国 メイヨークリニック留学(~1994)
1997年 獨協医科大学 第一内科講師
1999年 東京大学医学部附属病院リハビリテーション科 医員
2001年 東京大学医学部附属病院リハビリテーション科 助手
2003年 獨協医科大学リハビリテーション科 講師 および
東京大学医学部附属病院リハビリテーション科 非常勤講師