懐かしい歴史の町並み探訪 Vol.1 佐原(千葉県)懐かしい歴史の町並み探訪 Vol.1 佐原(千葉県)

佐原(千葉県)利根川水運で栄えた小江戸の町並み

「お江戸見たけりゃ佐原においで~」

江戸時代、商業の町として栄えた佐原の繁栄ぶりは、商家の蔵造りに見ることができ、その面影を残した町並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。江戸の戯れ歌に「お江戸見たけりゃ佐原へ御座れ、佐原本町江戸優り」と唄われ、利根川を通して商業の繁栄と江戸の文化がもたらされました。

佐原は下総国一宮・香取神宮の門前町で、国分氏が治めていた江戸時代以前から市場町としてもにぎわっていました。江戸期に根川水運の河港として年貢米の集散地になると、物資が集散する商業町へ発展しました。国分氏の家臣だった伊能家永沢家は、帰農して酒や醤油などの醸造業を興し、佐原の代表産業に育て上げました。

日本初の実測日本地図を製作した伊能忠敬は、18歳の時に佐原の伊能家に養子入りし、50歳で江戸に渡りって地理学者となりました。『残したい日本の音風景百選』にも選ばれた樋橋の側に伊能忠敬旧邸があります。旧宅と小野川を挟んで建つ伊能忠敬記念館は、忠敬の50歳までの前半生と全国調査の行程を紹介する博物館になっています。

佐原の町並みは代々続く現役商家の「生きている町並み」

小野川沿いと川に交差する香取街道に交差する忠敬橋周辺に、江戸末期から明治の古い商家があります。川沿いには町家の風景が、町の中央を走る街道沿いには土蔵造りの商家が並びます。そのほとんどが昔からの家業を引き継いで今も営業を続けている商家で、「生きている町並み」として血の通った暖かさを感じます。

佐原を代表する風景のひとつに、ワカサギのいかだ焼で知られる佃煮屋の正上があります。醤油醸造をしていた老舗で、川にせり出した船荷の積降ろし用のだしと呼ばれる石段と枝垂れ柳が江戸時代の雰囲気を醸し出しています。

忠敬橋のたもとに明治初期から荒物や雑貨・畳を商ってきた中村屋商店があります。香取街道沿いには中村屋商店をはじめ乾物屋、そば屋、本屋、呉服屋と生活に関わる商店が多く、町の魅力になっています。

正文堂書店は江戸時代から和本の出版・販売をしてきた店で、屋根付きの飾り看板には、上り龍・下り龍の彫刻があり、ひときわ目を引きます。小堀屋本店は創業天明2(1782)年の日本そば屋の老舗で、昆布の粉を入れ打った黒切りそばや柚子を入れた柚子切りそばなどが味わえます。

その他にも、重厚な黒漆喰の耐火土蔵造りの中村屋乾物店、文化元(1804)年創業の福新呉服店向後本店、寛政6(1794)年、奈良漬けづくりから創業した旧油惣商店、明治~大正期の洋館建築・蜷川家具店三菱館(旧三菱銀行佐原支店)小堀屋別館など、歴史的建物が残っています。

  • 小野川沿いの町並
  • 佃煮屋正上
  • 船着場だしと佃煮屋正上
  • 中村屋商店
  • 正文堂書店
  • 小堀屋本店(右)と福新呉服店(左)
  • 福新呉服店の大女将
  • 中村屋乾物店
  • 和紙の並木仲之助商店
  • 三菱館(旧三菱銀行佐原支店)
  • 蜷川家具店
  • 小堀屋別館

今も残る2軒の造り酒屋~町並みにアクセントを与える煉瓦造りの煙突

佐原では酒や醤油の醸造も盛んで、最盛期には35軒もの醸造家がひしめいていたといいます。現在、佐原に残る造り酒屋は東薫酒造馬場本店酒造の2軒だけ。そのうち天保13(1842)年創業の馬場本店は、敷地内にイギリスから取寄せた煉瓦を使って建てられた煙突がそびえていて、町並みのアクセントになっています。

  • 東薫酒造の主人
  • 馬場本店酒造(外観)

アクセス

交通 JR総武線佐原駅まで東京駅から成田駅乗換え銚子行で2時間
東京駅八重洲口から鉾田駅行で忠敬橋バス、銚子行で佐原駅前バス85分
東関東自動車道・香取佐原ICから8分
問い合わせ先 水郷佐原観光協会駅前案内所
TEL:0478-52-6675

マップ

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