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- Vol.5 上田・松代・海野宿(長野県)
上田・松代・海野宿(長野県上田市/長野市/東御市)真田親子が築いた城下町・北国街道の宿場町
真田昌幸と信之・信繁(幸村)親子の物語
2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』は、真田昌幸と信之・信繁(幸村)親子の物語ですが、その前半の舞台が信州東部(東信)の中心地・上田です。今回は、すでにブームになっている真田氏発祥の地・真田庄を含む上田とその関連の地、松代(長野市)・海野宿(東御市)を訪ねます。歴史を踏まえて、上田城・松代城をはじめとする真田氏ゆかりの地を歩くと、大河ドラマだけでなく、池波正太郎『真田太平記』や火坂雅志『真田三代』といった小説も、より一層興味深いものになることでしょう。
“六文銭”の町・上田と“信州の鎌倉”別所温泉
長野県東部・東信地方の中心都市・上田市は、盆地に立地していて、千曲川を挟んで川東・川西と呼ばれています。川西は塩田平と呼ばれる一帯で、信州の鎌倉といわれるほど史蹟を多く残し、山懐には名湯別所温泉もあります。一方、川東は上田城を中心とする城下町として栄えた地区で、旧北国街道も通る宿駅が置かれていました。
戦国時代、甲斐の武田信玄の信濃侵攻で滅ぼされた海野氏の一族であった真田氏は、信玄に従い、この上田に城下町を築きました。関ヶ原の戦いでは、真田昌幸は二男・幸村とともに西軍(豊臣方)として戦い、上田城を舞台に徳川軍を相手に奮迅します。
一方、東軍(徳川方)に属し、父と弟の守る上田城攻めに加わった長男の真田信之は、東軍の勝利によって真田家の所領を安堵され、上田城に入封。上田藩9万5000石が成立します。この時、信之は戦で破壊された上田城の修築よりも、城下町の再建を優先しました。上田城の修築はその後、入封した仙石氏によって進められ、その後、仙石氏に替って但馬出石から(藤井)松平忠周が入封し、以後、幕末まで松平氏の城下町として栄えました。
江戸時代を通じて町並みが残されてきた上田でしたが、明治2年の争乱で町家は焼失し、町割りだけが残りました。現在、残っている町並みは明治時代以降に復興したものですが、城下町の東側、旧北国街道筋の宿場町が中心で、土蔵造りの建物が多いことからもそのことがうかがえます。
町歩きは、駅から上田高校の正門として使われている上田藩主居館の表門を見ながら、上田のシンボル・上田城へ。桜の時期はとくにおすすめです。城跡を出て、旧北国街道を紺屋町から造り酒屋・岡崎酒造のある柳町へ。柳町辺りの南北筋には特徴的な卯建(うだつ)※1を掲げた伝統的な建物がほどよく残り、典型的な古い町並みの様相を呈しています。海野町から常田町へ旧北国街道を歩いても城からおよそ1時間。池波正太郎真田太平記館も必見です。
戦国時代のヒーローとして現在も語り継がれている真田氏が、上田を治めていた期間はわずか30年ほどしかありませんでしたが、上田の北にある真田氏発祥の地・真田庄も含めて、上田の町は真田氏一色です。
※1:日本家屋の屋根に取り付けられる小柱、防火壁、装飾のこと
真田幸村も愛した別所温泉
上田から塩田平を貫いてのんびり走る2両編成の電車が上田交通別所線で、その終着駅が山懐に抱かれた静かな湯の郷・別所温泉です。池波正太郎『真田太平記』の中でも若き日の幸村がたびたびここを訪れていますが、現在でも上田の旅には欠かせない温泉地です。
この一帯は“信州の鎌倉”と呼ばれていますが、鎌倉時代、執権・北条義時の子・義時と孫・義政が信濃の国守護としてここに館を構えていたことに由来します。彼らはこの地に名僧を招いて数々の名刹(国宝・重文)を築き、残しました。北向観音・常楽寺、安楽寺・八角三重塔(国宝、日本で唯一八角形の塔)、塩田平の中禅寺・薬師堂(重文)、“未完の完成塔”として親しまれている前山寺・三重塔(国重文)、青木村の“見返りの塔”大宝寺・三重塔(国宝)など見どころ満載です。
松代-時代を映してきた真田氏10万石の城下町
長野市の近郊、上信越道・長野ICのすぐ南側に、近世の城下町・松代町があります。松代は三方を山に囲まれ、西口を神田川が塞いでいる(千曲川に流れ込んでいる)天然の要害で、戦国時代、北信の拠点となった城下町です。武田信玄が築いた海津城は、織田信長の家臣・森長可、越後上杉氏など、複数の領主と転変を経て、元和8年(1622年)に上田から入封してきた藩祖・真田信之を初代に、10代にわたって真田氏が統治し、明治時代を迎えます。
江戸期の松代藩は、信濃で唯一10万石を有する大藩※2でした。しかし、維新後の信濃国内の県再編で、最初の県庁は幕府陣屋のあった中野、次いで善光寺門前の農村地帯だった長野に移され、長野県が誕生します。松代も県庁誘致に動きましたが、叶いませんでした。その後、信越線からも外れて、政治・経済・文化の中心は長野に移りましたが、そのことが幸いして、広大な敷地の武家屋敷や町割りなど、真田氏250年の歴史が当時のまま残っています。
現在、2012年に廃線となった長野電鉄河東線の旧松代駅からすぐの所に、桜の名所でもある松代城跡※3の石垣が保存されています。真田氏は、城の東側を南北に貫通する北国脇往還沿いに故郷上田の町名を移した町人町をつくり、その外側に武家町を同心円状に配置しました。
真田氏の歴史の跡は、旧松代駅から歩いて5分の真田宝物館、旧真田邸(国史跡)、その先の松代藩校の文武学校などにも色濃く残っています。文武学校は藩主・幸貫(ゆきつら)が幕末の開国論者・佐久間象山の進言に基づき、蘭学や砲術を学ばせるためにつくった堂々たる藩校で、見応えがあります。
代官町・竹山町は武家屋敷が並ぶ、往時の面影を残す静かな一角で、その中心に150石の中級武士・横田家の屋敷があります。横田家を出てすぐの所にある、時代の先覚者・佐久間象山を偲んで、町の有志が浄財を集めて建てた象山記念館と象山神社も必見です。
町の南郊外、象山の地下に大規模な地下壕(松代象山地下壕)が残されています。太平洋戦争末期に本土決戦に備えて、大本営移転計画のために9か月間、延べ300万人を動員して掘られたものですが、結局完成を見る前に終戦を迎えました。伝統的な町並みとは別に、近代史を振り返るひとつの遺産として貴重なものとなっています。
※2:信濃の他藩の石高=松本藩7万石、上田藩6万石、飯田藩5万5000石
※3:現在のアクセスは、北陸新幹線・長野駅からバスで30分
海野宿-養蚕業で重厚さを増した北国街道沿いの町
上田の東、しなの鉄道の大屋駅と田中駅の間、旧東部町に北国街道の宿場町の面影を残す海野宿があります。国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され、日本の道100選にも選ばれています。1742年、千曲川大水害で壊滅した田中宿の代わりに、上田城下との間宿だった海野が本宿に昇格し、宿場町が形成されました。明治時代に国道や鉄道の建設が町を大きく迂回したことが幸いし、海野宿の町並みは当時のまま残っています。
中世、豪族だった海野氏によって支配されていた海野郷が、武田信玄の信濃侵攻で滅亡する中で、海野氏の一族である真田氏は信玄に従い、上田に城下町を築きました。この時、海野宿から商人を上田城下に呼び寄せて生まれたのが海野町です。これ以後、城下の海野町と区別するために海野宿は、本海野の名で呼ばれるようになりました。
海野宿の街並みはまるで建物の博物館のようで、長短二本ずつ交互に組まれた海野格子や大戸(潜り戸)、防火に備えた見事な卯建(うだつ)などが目立ち、江戸期の建物と明治時代以降の建物が重なり合って、見る者の目を楽しませてくれます。
約650m伸びる街道の中央には堰(せき)と呼ばれる用水路が引かれ、海野宿を特色づけています。道の両側には本陣・脇本陣をはじめ二階造りの旅籠が残っており、壁面に柱を見せる真壁造り(まかべづくり)や、二階を一尺ほどせり出した出桁造り(だしけたづくり)も見られます。
明治時代以降、海野は宿場町から農村集落へと変わり、そして日本有数の養蚕地帯となります。屋根の上に設けられた小屋根は気抜きの櫓(やぐら)と呼ばれる、養蚕民家によくみられる特徴の1つです。
アクセス
交通 |
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問い合わせ先 |
上田市役所観光課
TEL:0268-23-5408
長野市観光振興課
TEL:026-224-8316
東御市観光協会
TEL:0268-62-1111 |
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