懐かしい歴史の町並み探訪 Vol.3 栃木(栃木県栃木市)懐かしい歴史の町並み探訪 Vol.3 栃木(栃木県栃木市)

栃木(栃木県栃木市)“関東の倉敷”と呼ばれた蔵の町

江戸初期からの歴史を残す栃木の町

栃木県の県庁所在地は宇都宮市ですが、なぜ県の名前が栃木なのか疑問に思ったことはありませんか? その答えは県南の町・栃木の歴史にあります。

明治に入り、廃藩置県で真岡県・日光県を合併して栃木県が誕生し、地理的に中心で経済的にも栄えていた商都・栃木町に県庁が置かれます。その後、北部の宇都宮県と合併して以降も、しばらく(約11年間)は栃木町にありましたが、宇都宮が栃木県の中央にあることから、明治17年に県庁が宇都宮に移転され、今日に至っています。栃木市は現在では小都市に過ぎませんが、古い歴史と風格は風化せず色濃く町に息づいています。

栃木町の歴史は、16世紀の天正年間に皆川広照によって栃木城が築かれ、城下町が整備されたことに始まります。江戸期に入って城は破却され、町は巴波川(うずまがわ)舟運の商家町として再出発します。しかし、タイミングよく家康の日光改葬や東照宮造営事業が始まると、資材や物資は全て江戸から舟で江戸川、利根川、渡良瀬川を経て巴波川を遡り、栃木の町の河岸にすべて陸揚げされました。やがて、東照宮が完成すると朝廷から毎年、例幣使(れいへいし)が派遣されるようになり、東照宮に参拝する西国の諸大名も通る日光例幣使街道の宿場町としても賑わい、水路・陸路両面の拠点として発展します。

栃木町が「蔵の町」となるのは、幕末の戦乱に因ります。尊皇攘夷や倒幕の動きが活発になる中、水戸藩士率いる天狗党の「栃木陣屋の戦い」で、栃木の町は消失してしまいます。この復興の際に耐火性のある土蔵造りの建物が建てられ、巴波川沿いや例幣使街道沿いに古い蔵が現在も数多く残っています。

  • 栃木の玄関口・JR東武栃木駅
  • 巴波川と塚田商店
  • 巴波川舟巡り
  • 蔵の町大通りの町並

川面に蔵や黒塀が映る“関東の倉敷”

JR両毛線・東武日光線の栃木駅から歩いて10分、幸来橋のたもとの巴波川河畔に漆黒の板塀が見えてきます。江戸後期から木材回漕問屋を営んでいた塚田家の塚田歴史伝承館です。屋敷内の8棟の蔵は木材問屋だけにどれもノッポで、蔵には塚田家ゆかりの収蔵品が展示されています。趣ある庭園や建物も併せて楽しめます。

倭町(やまとまち)の路地を入ると、回漕問屋だった坂倉家の土蔵を改装した栃木市郷土参考館があります。蔵の町大通りに入るととちぎ山車会館、江戸末期の土蔵4棟を利用した美術館のあだち好古館山本有三記念館、典型的な店蔵を利用した蔵の町観光館などが見られます。

巴波川沿いに戻って常盤橋を渡ると、明治時代に建てられた両袖切妻造の横山郷土館が見えます。大谷石を使った石蔵や建物の奥にある京風の庭が見事で、元水戸藩士だった小山定之助がここで麻問屋を営み、成功すると金融業を開業しました。右半分で麻問屋、左半分で金融業を行い、いまも当時の様子が再現されています。

栃木の展示蔵には美術品や骨董品、歴史資料や家業の道具類などがあり、豪華さや華麗さはありませんが、郷土文化を大切にする人びとの誇りが感じられます。

あちこちに洋風建築が見られるのも町の特徴で、主なものに栃木市役所別館栃木病院などがあります。江戸時代から明治時代の初めごろまでは繁栄しましたが、それ以降は大きく開発されることはなかったため、町は大きく様変わりすることなく、古い町並みが現在も残っており、見て歩いているだけでもタイムトリップした気分になります。

  • 巴波川越しに望む塚田商店の黒塀と蔵
  • 塚田歴史伝承館
  • 人形ロボットによる人柱伝説実演(塚田歴史伝承館内)
  • とちぎ山車会館
  • あだち好古館
  • 蔵の町大通りにある洋館造りの手打ちそば店
  • 蔵の町大通りに並ぶ洋館と黒蔵
  • 蔵の町大通り・万町にある櫻井飼料店
  • 麻荢問屋と銀行を営んだ横山家(現横山郷土館)
  • 横山郷土館正面
  • 横山郷土館内
  • 県庁掘と旧県庁
  • 栃木市役所別館(旧県庁)
  • 大正2年に建てられた洋館建築の栃木病院

嘉右衛門町~巴波川沿いに発展した商家の町並み

例幣使街道を北に辿ると嘉右衛門町で、この地区はメインの道路から外れるため静かで、しかも連続した町並景観が比較的残っています。中心市街からわずかに離れているだけで、江戸時代末期から明治大正期以降の古い伝統的な佇まいの街並みが500mにわたって続き、時間の流れがまるで違っています。平成24年7月に栃木県内で初めて国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。

街道は緩いカーブを描きながら連なり、黒・白漆喰の町家や蔵造りの旧家が見られます。一角に残る岡田家はこの一帯の嘉右衛門新田を開いた士豪で、嘉右衛門新田村の代官職、そして本陣も務めていた由緒ある旧家です。代官屋敷岡田記念館(岡田嘉右衛門邸)でその歴史や所蔵品を見学できます。

町の北端の味伝味噌の蔵を利用した、味噌と田楽のあぶでんで一服も乙なもの。巴波川沿いの水辺風景、大通りの蔵の町並、嘉右衛門町の街道沿いと栃木の古い町並はこの三カ所が主体ですが、その中でも町並らしいのは嘉右衛門町です。

  • 緩いカーブを描く嘉右衛門町の町並
  • 嘉右衛門町の本陣だった代官屋敷・岡田記念館
  • 代官屋敷別邸・翁島
  • 肥料・農業資材の平沢商事
  • 老舗の油伝味噌(油屋傳兵衛)あぶでん
  • 大谷石の塀と瓦の道(油伝)
  • ヤマサ味噌(現在は操業停止)

アクセス

交通 東京 東北新幹線小山駅からJR両毛線栃木駅下車
上野 JR宇都宮線小山駅からJR両毛線栃木駅下車
浅草 東武スカイツリーラインで栃木駅
新宿 特急スペーシア栃木駅
東北自動車道・川口JCT 約50分
北関東自動車道・高崎JCT
問い合わせ先 栃木市観光協会
TEL:0282-25-2356

マップ

関連リンク

Profile

室田 隆 Takashi Murota

1950(昭和25)年、東京都生まれ。
生保会社に40年勤務。高校から通算12年にわたり、山歩きに勤しむ。最近、山歩きも復活(年に数回ほど)。
若い頃から古寺・仏像・庭園が好きで、京都・奈良・滋賀を中心に古寺を訪ねる。神戸に勤務した折、「西国三十三所観音巡礼」を満願。その後「坂東三十三所」、「五木寛之の百寺巡礼」をはじめ、全国にある古刹の仏塔(120塔)・仏像と名庭園(460園)を巡る。
退職後は「歴史を感じる懐かしい町並み・集落探訪」をライフワークとして位置づけ、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)114カ所をはじめ、1500カ所以上の古き良き町家や町並み・農漁村集落を訪問。その維持保存にも思いをはせる日々。
また、「古城・城跡巡り(350城)」、「街道・宿場町歩き」、「枝垂桜の名木巡り」、「東京の坂歩き」、「美術展観賞」などを並行して取り組む。旅の手段は自動車でなく、電車・バスを使った旅のため、「ローカル線の鉄道旅」や「温泉巡り(160湯)」、「地酒行脚」も旅の友として楽しむ。