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- Vol.9 和田三郎 氏
益々のご活躍をお祈り申し上げます。
和田:技能五輪国際大会は、1950年(昭和25年)にスペインのマドリッドで第1回が開催されました。隣国ポルトガルと共に青年の技術交流をする、というのが最初の目的でした。現在は、職業訓練の振興と青年技能労働者の国際交流・親善等を図ることが目的の大会です。
今年の大会で第38回目になります。日本が初めて大会に参加したのは、1962年(昭和37年)、スペインのヒホン市で開催された第11回からです。最初はヨーロッパを中心に毎年開催されましたが、現在は奇数年での開催になっています。 現在の加盟国は、日本をはじめ、スペイン、ドイツ、イギリス、フランス、アメリカ、韓国、アラブ首長国連邦、オーストリアなど42カ国です。
和田:技能五輪国際大会への出場選手の資格には、年齢制限があり、出場する年に満22歳以下である者となっています。職種は40種類を越えないというルールがあります。
和田:日本と韓国では国の取り組みかたに違いがあります。韓国では、大会のための選手を国が育成しています。日本では生涯大工をやろうという人が大会に出るのですが、韓国ではそうではないようです。韓国では大会での成績優秀者には賞金が出ます。正確にはわかりませんが、例えば、金メダルの人には一軒の家や、大学をタダで行かせてもらえるとか、企業からスカウトされて一流企業に入れるなど魅力的な特典があるようです。競技大会のレベルは非常に高いのですが、職人としての建築レベルは低いようです。
和田:大企業のデンソーやトヨタなどの職種は別ですが、競技大会としてはまだまだ力が弱いです。国の支援も、韓国と違ってなかなか得られません。若干の援助はありますが、ほとんど自己負担です。例えばユニフォームは全部買い取りです。個人や企業、組織の負担になります。10年前の1995年フランス・リヨン大会では、エキスパートにはユニフォームがなく、レセプションに参加するときも、ユニフォームがないのは日本だけでした。恥ずかしい思いをしました。技術的にも、なかなか競技大会として進歩しない状況です。
和田:日本と韓国とでは大きな違いがあります。例えば日本は、注意されないように競技をするのですが、韓国の場合は、注意されたらやめればいいという考えです。日本は図面が解けるまで一生懸命、会場内で考えています。考えていると、どんどん時間が経っていきます。韓国はすぐ手を挙げてトイレに行きたいと言います。トイレはロスタイムですから、会場の中で考えるより外で考えたほうが効率いいのです。そして残り11分のとき、会場の時計は1分ごとにカチッ、カチッと鳴るのですが、わざわざストップウォッチを渡していました。時間を有効に、最後の1秒まで使いきるという考えです。
和田:私たちが国際大会に参加したのは、第33回フランス・リヨン大会(1995年)が初めてです。息子(和田智一さん)が建築大工職種の日本代表選手として出場したのですが、その関係でエキスパート(審査員)のオファーがありました。息子はその大会で10年ぶりのメダルで、銅メダルを取りました。
和田:競技時間は4日間で23時間です。1日に6時間です。正確にいうと、22時間以内に適した課題を作るということになっています。競技の進行状況に応じて1時間を加えます。
資料が乏しい中でも、日本の課題を提出し、息子は銅メダルが獲得できて本当によかったと思います。そういう状況で息子と2人で苦労したものですから、それ以降は次の選手にすべての資料を公開して引き継ぎをするという条件で続いています。現在私はエキスパート(審査員)として、息子は国内の指導員として選手を指導しています。
和田:近年20年間で、息子(和田智一さん)が10年前のフランス大会で銅メダルを取って以来、まだ1個しか取っていません。建築大工の課題は数学の幾何学ですので、世界共通です。道具ややり方は若干違いますが、課題は同じものです。日本の国内大会では、課題を2,3ヶ月前に公表するので、指導員たちが問題を解いて、選手に同じものを何回も繰り返し練習させます。国際大会では競技の1時間前に課題が発表されます。ぶっつけ本番ですから、本当の実力がないとできません。国内大会では、例えば図面が間違っていても、選手は同じものをくり返し練習していますから、必ず作ることができるのです。国際大会はその図面が間違っていると絶対にできません。その図面を解く力が、日本はヨーロッパなどに比べるとまだ低いような気がします。
和田:フランス大会の時の課題部門では、フランスが1位、オーストラリアが2位、日本が3位でした。イギリスのエキスパートは、日本の課題は素晴らしいと言います。素晴らしいのだけれど、うちの選手には無理だと言っています。何故なら、全然作りが違うんですよ。外国では細工ものが少ないのです。
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エキスパートは自分の国の審査は一切できない。競技中でも他の国のエキスパートに、通訳を通して間接的にしか会話はできない。
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4日間22時間の競技時間で課題を完成させる。
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1995年第33回フランス・リヨン大会。できる範囲で、選手のバックアップしている和田ファミリー。
(左から:和田智一さん、和田さんの奥様、和田三郎さん、通訳の姪御さん) |
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