- HOME
- 繋がる
- 年輪を重ねることはそれなりに愉しい人生
- Vol.19 花れん 氏



![]() ![]()
花れん氏(以下、敬称略):2007年に私の母校・早稲田の創立125周年記念イベントの一環として、国立競技場で日韓のサッカー交流試合があり、早大と韓国・高麗大の校歌を独唱したことがありました。その時のイベント主催者の方から、自転車イベントの司会を頼まれたことが自転車レースと出会うきっかけになりました。それまでは、プロの自転車選手を見たこともなければ、競技の内容もまったく知りませんでした。
![]()
花れん:私には、選手たちが「低空飛行の鳥」のように見えました。スピード感はもちろんですが、選手たちが走りながら織り成す形がとても面白いと思ったのです。レース中の選手の群れを上空から俯瞰すると、形が絶えず変わっていくわけです。やがてその群れから飛び出してアタックをかける選手が出てくる。まるで鷹みたいに…。
![]()
花れん:はい。選手たちの走る形から、「雁(がん)の群れのように、一羽の鷹のように」というフレーズが浮かんで、これはもう曲を作らなければと。それに、エキップアサダというチームがとても魅力的に見えたのです。エキップアサダの選手は一人ひとりが独立していて、なおかつ浅田監督の掲げる理想や目標の下に結束しています。
母体が大きいわけではなく、決して恵まれた環境とはいえないのに、ツール・ド・フランスを目指す気持ちを捨てずに頑張っていて、確実に実績を上げている。そんなチームのあり方に共感を覚えたんですね。自分にできることは何だろう、お金は出せないけれど、選手たちに何かパワーを注ぐことはできるかもしれないということで、歌を作ろうと思ったのです。 ![]()
花れん:そうですね。初めてロードレースを見た衝撃やエキップアサダというチームへの感動を元に、何らかの形で選手たちを後押しできればいいなと思って作りました。それで、ライブで初めて披露する時に、後援会の方が見に来てくださって、ぜひこの曲をレースで流したい、チームの応援歌にしたいと言ってくださったんです。
![]()
![]() なかでも新城選手(当時エキップアサダ所属)は、レース前にモチベーションを上げるために聞いてくださったようで、フランスのブイグテレコムに移籍する時もCDを持って行ってくれました。 ![]()
花れん:選手はどんな思いを背負ってペダルをこいでいるのだろうと考えた時、家族とか後援会の人とか、これまでの自分を支えてくれた人への思いを背負って、風や太陽に抗いながら自分の限界までペダルをこいでいるのではないかと思うんですね。 とくに、ここ一番のふんばりどころで、大切な人の顔が浮かぶこともあるのではないかと思って。そうした選手の思いを想像しながら作りました。 ![]()
花れん:ほんのりロック感のある曲調で、今までの自分の路線とは全く違う曲ができました。私の音楽をずっと聞いてくれていた人の中には、私のカラーと違うねという人もいましたが、自分としては創作の幅が広がって良かったと思っています。
それに、この曲を作ったことで、音楽だけをやっていたら絶対つながらなかった人たちとつながりができたことはとても嬉しいですし、ありがたいことだと思っています。 |

![]() ![]()
花れん:大学時代にミュージカルのオーディションを受けて、数年の間にいくつか舞台に関わりました。ミュージカルは歌と踊りと芝居の要素が求められますが、ミュージカルを経験したことで、あらためて自分は歌が好きだったんだと確認できました。
花れん:じつは交通事故に遭って2か月ほど入院しているうちに、筋力が落ちて、リハビリしても後遺症の部分は踊れるほど回復しませんでした。それから自分にできることを、少しずつやっていこうと思って歌に専念しました。
当初はジャズとか、ありものの曲を歌っていました。その後、ル・クプルという夫婦ユニットでギターを弾いていた藤田隆二さんと組むことになりました。その時に初めて自分で14~15曲分の詞を書いたり、J-POPといわれる曲を作って歌い始めたのです。今思うと、この時期が私のシンガーソングライターとしての土台になっています。
![]() ![]()
花れん:そうですね。綺麗な日本語を使いたい、書いても綺麗、言葉に発しても綺麗、そんな日本語をつづりたいという思いは、いつも持っています。歌い始めた頃、英語の曲ばかり歌っていたので、日本語の発音がまずいと指摘されていました。ピーとかパーとかティーとか破裂音が強すぎると。確かに昔の音源を聞いてみると、なんてまずい日本語の発音をしているのだろうと思います。
花れん:たとえば、人と話している時や映画を観ている時、全く脈絡のない言葉が頭に飛び込んでくるんです。その言葉を携帯電話にメモして、自分のパソコンにメールします。作詞をする時には、その言葉のストックをパーッと見ていくんですよ。すると、気になる単語が必ず出てくるので、そこからストーリを広げて詞を書きます。たったひとつの言葉を拾って、そこからイメージを広げていくことが多いですね。
花れん:父がクラシック音楽も好きで、ブラームスやシベリウスのレコードを聴いていました。そのせいか、私もシベリウスの「フィンランディア」という曲が大好きで、とくに第2楽章が好きです。小学生の頃、父に「こんなに澄んだ音が生まれる場所はどこ?」と聞いた覚えがあります。父は地球儀のスカンジナビア半島を指して、フィンランドという国だと教えてくれました。それ以来、フィンランドに行くのが私の夢になり、大学時代初めて行った海外はもちろんフィンランドでした。
![]() 南青山MANDALAライブにて 好きなアーティストは、ノルウェーの国民的歌手シセル・シルシェブーです。透明感あふれる声の持ち主で、生まれて初めて買ったCDは彼女のものでした。会ったこともないし接点もないんですけど、歌い手としての私のルーツになっている人です。
花れん:最近では新宿・紀伊國屋ホールで行なわれた舞台『相思双愛』の音楽(BGM)を担当させていただきました。今後は映像と音楽のコラボレーションなども手がけていきたいですね。CM出演もナレーションも、全く予想もしていないところからつながった仕事で、どこでどんな仕事に巡り合えるかわからないという楽しみがあります。
仕事については、何かに限定する必要はないと思っています。挑戦したことは必ず自分の音楽に生きてくると思います。今は自分に要求されたことに対して、200%の力を出していきたいですね。自分にできる限りのことをして、誠実に仕事に取り組んでいきたいと思っています。 ありがとうございました。
これからも多くの人を魅了する素敵な歌を作り続けてください。
|
年輪を重ねることはそれなりに愉しい人生
- Vol.24 浅田顕 氏
後藤義治 氏 - Vol.23 萩原 かおり 氏
- Vol.22 堀江眞美 氏
- Vol.21 原田忠幸 氏
- Vol.20 齋藤佳名美 氏
- Vol.19 花れん 氏
- Vol.18 宮澤崇史 氏
- Vol.17 常磐津千代太夫 氏
- Vol.16 尹貞淑 氏
- Vol.15 土屋郁子 氏
- Vol.14 内野慶子 氏
- Vol.13 浅田顕 氏
- Vol.12 桜林美佐 氏
- Vol.11 出石尚三 氏
- Vol.10 只浦豊次 氏
- Vol.9 和田三郎 氏
- Vol.8 小林洋 氏
- Vol.7 永井明 氏
- Vol.6 ラモン・コジマ 氏
- Vol.5 母袋夏生 氏
- Vol.4 吉村葉子 氏
- Vol.3 伊達晟聴 氏
- Vol.2 辺真一 氏
- Vol.1 柳澤愼一 氏
年輪を重ねることはそれなりに愉しい人生
- Vol.24 浅田顕 氏
後藤義治 氏 - Vol.23 萩原 かおり 氏
- Vol.22 堀江眞美 氏
- Vol.21 原田忠幸 氏
- Vol.20 齋藤佳名美 氏
- Vol.19 花れん 氏
- Vol.18 宮澤崇史 氏
- Vol.17 常磐津千代太夫 氏
- Vol.16 尹貞淑 氏
- Vol.15 土屋郁子 氏
- Vol.14 内野慶子 氏
- Vol.13 浅田顕 氏
- Vol.12 桜林美佐 氏
- Vol.11 出石尚三 氏
- Vol.10 只浦豊次 氏
- Vol.9 和田三郎 氏
- Vol.8 小林洋 氏
- Vol.7 永井明 氏
- Vol.6 ラモン・コジマ 氏
- Vol.5 母袋夏生 氏
- Vol.4 吉村葉子 氏
- Vol.3 伊達晟聴 氏
- Vol.2 辺真一 氏
- Vol.1 柳澤愼一 氏