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- Vol.22 堀江眞美 氏
堀江氏(以下、敬称略):そうですね、とても有り難いことに「堀江眞美に依頼すると必ずヒットする」と言っていただけます。そのように私を必要としてくださる方々の期待には120%のパワーでお応えすることが私の使命だと思って活動しています。
また、最近はゲームのテーマ曲をジャズアレンジしたアルバムを出したりもしています。新しいチャレンジでしたが、各方面で好評をいただいていて、とても嬉しい限りです。
堀江:ある日、秋川雅史さんが「いま、僕の人生を決める曲がある。あなたに決めた、あなたでないと歌えない」と、私のライブにいらして、控室でおっしゃってくださったんです。
後日、私は秋川さんの歌に合わせてピアノを弾き、そのメロディーにオーケストラがつきました。 最初はアルバムに収録されていたものが、シングルカットが決まり、再度レコーディングをしたものが皆さんが良く耳にされているバージョンの曲です。
高知の病院で婦長の職に就き、さらに、寝たきりの祖母と病気の父の看護をする日々の傍らで音楽を教えてくれたのです。 後に東京に来てからは、看護師の労働基準法を作るために闘ったりもしていました。 75歳まで訪問看護を続けていたのですが、残念なことに体を壊してしまい、今は闘病生活を送っています。 献身的で正義感の強い母にとても強い影響を受けて、今の堀江眞美がこの世に存在するのです。
堀江:父が亡くなった後、母は、重症心身障害児の施設である「土佐希望の家」で働くようになりました。
私は中学生の頃から、週末は母を手伝ってその施設で入所されている皆さんのお世話をしていました。お世話をしている間、私はいつも歌を歌っていました。私が歌うと皆さんは一緒に歌ってくれ、とても穏やかになります。声が出なくても、一緒に歌ってくれるんです。歌を歌う時、歌を聴いている時、私たちは心が通じ合っていたんだと思います。 私にとって転機だったのは、筋ジストロフィーの6歳の男の子が亡くなった時です。先週まで元気だったヒロム君が突然、何の前触れもなくこの世からいなくなってしまった…と思ったら「生きる」ということについての意識が大きく変わりました。 私にとって「生きる」ということは「歌う」ということと同じ、当時の私の生活にはほとんどすべてに歌がありました。それが「生きる」の意味がとてつもなくリアルに感じられた時、歌は心の声なんだと気付きました。
堀江:それが…東京に来て以来、30年以上帰郷していませんでした。高知県民ならではの頑固さと言いますか(笑)「有名になるまでは帰らないぞ」と勝手に心に誓っていました。
ところが、2年ほど前に、高知でお世話になっていた方から「いいかげん、帰っておいでよ」と言っていただいたので、それならば、ということで帰郷しました。 その際に「土佐希望の家」の皆さんにキーボードをプレゼントしようと伺ったのですが、ちょうどクリスマスだったのでライブをしようということになり、施設中の皆さんと楽しく過ごしました。
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(※※大川小学校のご遺族が亡き子たちに宛てた手紙を葉方さんが絵本にまとめたもの) 大川小学校の近くに建てられた慰霊塔に、ある日、子供たちに呼びかける手紙が置かれていたそうです。そこに書かれていた詩に曲をつけてほしいという依頼を引き受け、お盆に海で曲を流したいということで、急いで作曲し、レコーディングをしました。 完成した曲をお渡しした翌日に、葉方さんと親御さんたちは海で曲を流したそうです。歌詞に込められた想いが曲となって風に乗り、犠牲になった子供たちの霊にも届いたことを実感できたそうです。 しかし、この曲はその後、封印することになってしまいました。葉方さんに「申し訳ないけれど、この曲は親御さんたちにあげたものと思って忘れてください」と言われたのです。 犠牲になった子供たちや遺族の方々の魂を鎮める曲である一方、逆に思い出すのが辛い、ショックから立ち直れない、まだそっとしておいてほしいという方々もいました。 そのような事情から、1年と4ヶ月の間、一度も歌うこともなく、心の片隅にひっそりとしまっていました。 それが、2012年の年末に、葉方さんから久しぶりに連絡を頂きました。 実はもうじき、捜索が打ち切られてしまう。「このままでは、大川小学校の子供たちの事が忘れ去られてしまう…」と親御さんたちが悲しんでいるので、あの曲をCDにして世の中に出すことで遺族の方々のささえになれないか、と相談を受けたのです。 それならばということで、レーベル会社に掛け合い、自費でCDをリリースすることにしました。
堀江:大川小学校で歌いたいという気持ちもありましたが、今はまだ、その時期ではないようなので実現していません。
でも、親御さんたちが育てたひまわりの種が私のところに届いています。 今年の3月11日には、高知の小学校にその種を持っていき、子供たちに手渡しました。できれば全国の小学校にこのひまわりの種を持って歌いに行きたいと思っています。 それと、今年の1月と2月に東京で開催された「ひまわりのおか」朗読会では、「君へ」を歌わせていただく機会がありました。 2月の朗読会には、一組のご両親がいらしてくださったんです。「来て良かった」とお二人に言っていただけて、とても胸が熱くなりました。
堀江:そうですね、でも、私は痛みというのは分け合うものだと思っています。分け合うことで感じる痛みによって、人はあらためて「やさしさ」というものに気付くこともできます。
供養は亡くなった方々のためだけではなく、残された方々のためでもあります。忘れないこと、伝えていくことが供養になると思うのです。 私は自分の身体を介して、人々の心を癒し、勇気づけることのできる、音楽のパワーというものを伝えていきたいと思っています。 人にはそれぞれにとって必要な心のテンションというものがあって、その心の弦は張りすぎても緩めすぎてもいけない、中間くらいが良い。そのバランスを取るために、心のチューニングをするのに音楽は助けになるのです。 人間の能力の凄いところは、見るもの聞くものを選ぶことができることです。見たいものだけを見る、聞きたい音だけを聞くということができるのです。 そういう意味で、この「君へ」という曲が多くの方々の心に残ってもらえればいいなと願っています。当事者の方でなくても、それを見て知って心を痛めている人たちも傷ついています。そういう人たちの慰めにもなって、風に乗って広がっていけばいいなと思っています。 |
堀江:2年前に30数年ぶりに高知へ帰って以来、今はたびたび帰郷しています。昼は地元の小学校などでボランティア活動を、夜はライブやワークショップなどを開催しています。私の演奏を見て「将来ピアニストになる!!」と言ってくれた4歳の子から、母の知り合いで訪ねてきてくださる70歳代の方まで、様々な方たちと交流させていただいています。
もちろん、高知以外にも東京をはじめ様々な地域で活動しています。
堀江:先の大戦で若くして命を落とした方々が聞きたかったであろう望郷の歌を歌いたいと思っています。その当時の日本人が心癒され、励まされた曲を集めてアルバムにする企画です。いま、母と一緒に選曲をしています。
戦争の時代について知ることは、自分の祖先について知ること、歴史を知ることになると思うのです。自分のルーツを知ることによって、両親、祖父母、家族やお年寄りへの敬意を持つことができるようになるでしょう。命の尊さや平和な社会についても改めて気付かされるはずです。 戦争を体験された方々に、その時代のお話をしていただくためのきっかけになるアルバムになれば良いと思っています。人は、誰かに話を聞いてもらう事で癒されます。また、その時代に想いを馳せることによって、自分も癒されると思います。 このアルバムをその時代を生き抜いた父に捧げます。
いつも思うのですが、私が一番怖いと思っているのは「志」と「信念」を失うことです。最近は、今以上の事をやろうという人、魂を込めてやろうという人が少なくなってきたような気がします。 そんな時代だからこそ、自分の信じるままに生きていかないと。 |
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